スペインの一般紙『エル・パイス』によると、レアル・マドリーは今から約2年前にカルロ・アンチェロッティ監督を介して、当時不動の中盤トリオだったルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミーロに対し、「今後世代交代を見据えて若手を積極的に起用していく方針のため、君たちの出場機会は減少する」と言い渡したという。その直後に、カゼミーロはマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。
もっとも、「モドリッチとクロースは中盤のエンジンであり、長年マドリーを支えてきた。2人がいなくなったら、他のオートマティズムを植え付けるのはとても苦労するだろう」(スポーツ紙『AS』のマルコ・ルイス記者)、「マドリーは近年、重要な選手の退団の衝撃に耐えてきた。しかし、クロースとモドリッチがいなくなれば、その穴を埋めることはほとんど不可能な作業になる」(フリージャーナリストのダビド・デ・ラ・ペーニャ氏)といった警鐘の声が示すように、その難しさは当初から指摘されていた。
結局、その2022‐2023シーズンも2人はチーム内で不動の地位を築き、そして再びアンチェロッティ監督がフロントから中盤の世代交代を加速させるよう要請を受けた昨シーズンも、2人は不可欠な戦力であり続けた。確かに昨シーズンについては不動の司令塔として君臨し続けたクロースに比べれば、モドリッチのプレータイムは減少したが、魂のこもったディフェンスや卓越したチャンスメイク能力は健在で、たびたび違いを生み出す働きを披露。その活躍が認められ、昨シーズン限りでの退団が有力視されていた中、契約延長を勝ち取ったことは周知の通りだ。
その一方で、クラブもアンチェロッティ監督も残留を熱望していたクロースが現役を引退。いよいよ世代交代に待ったなしの状況となったのが今シーズンだった。
しかしいざ蓋を開けてみると、マドリーで選手、監督、GMを経験し、現在はメディアのご意見番として活躍するホルヘ・バルダーノ氏が「クロースが中盤でプレーするのではなく、クロースがプレーするエリアがマドリーの中盤だった」と評する絶対的司令塔の抜けた穴はやはり大きく、ここまで中盤は機能しているとは言い難い。それは1枚増やして4-4-2にシフトしたり(第9節のビジャレアル戦)、アントニオ・リュディガーとエデル・ミリトンがオーレリアン・チュアメニを挟む形の可変式の3バックを採用したりと(第10節のセルタ戦)、アンチェロッティ監督の試行錯誤が物語っている。
個々に目を向けると、そのチュアメニに加え、ジュード・ベリンガム、フェデリコ・バルベルデ、エドゥアルド・カマビンガと現在のマドリーの中盤には他のチームが羨む精鋭が揃っている。
しかしそれでも、長短のキックを駆使した配給と緩急をつけた駆け引きを極め、パス中心のクロース、動きも織り交ぜたモドリッチと補完性も抜群だった2人が中盤に君臨していた時代のマドリーに比べれば、今のチームは攻撃が一本調子な面は否めない。そんななか、もはやレギュラーとは目されていないとはいえ、モドリッチの存在感が再び増しているのは自然な流れだ。セルタ戦でも投入されるとすぐに、フリージャーナリストのサンティアゴ・セグロラ氏が「受け手にとってこれ以上ない繊細かつ上質で、相手DFにとっては破壊的な」と表現したスルーパスで、ヴィニシウス・ジュニオールの決勝点をアシストした(試合は2-1でマドリーが勝利)。
大手ラジオ局『カデナ・セール』でマドリー戦の実況を務めるアントニオ・ロメロ氏はそんな大ベテランを、「“クオリティー”から“筋肉”への方向転換が上手く行っていないマドリーで、最も信頼できる解決策であり続けている」と評価する。
この事態を前にして『エル・パイス』は「予期せぬ出来事が起こらない限り、来年の春にモドリッチとクラブは再び去就を話し合うことになるだろう」と論じている。クロースはすでにいないが、ピンチになれば、ベテラン頼みという構図はこれまでと同じだ。モドリッチの活躍は、若手中心の中盤がなかなか機能しないマドリーにおけるいわばアンチテーゼにもなっている。
文●下村正幸
【動画】モドリッチが決勝点をアシスト!
もっとも、「モドリッチとクロースは中盤のエンジンであり、長年マドリーを支えてきた。2人がいなくなったら、他のオートマティズムを植え付けるのはとても苦労するだろう」(スポーツ紙『AS』のマルコ・ルイス記者)、「マドリーは近年、重要な選手の退団の衝撃に耐えてきた。しかし、クロースとモドリッチがいなくなれば、その穴を埋めることはほとんど不可能な作業になる」(フリージャーナリストのダビド・デ・ラ・ペーニャ氏)といった警鐘の声が示すように、その難しさは当初から指摘されていた。
結局、その2022‐2023シーズンも2人はチーム内で不動の地位を築き、そして再びアンチェロッティ監督がフロントから中盤の世代交代を加速させるよう要請を受けた昨シーズンも、2人は不可欠な戦力であり続けた。確かに昨シーズンについては不動の司令塔として君臨し続けたクロースに比べれば、モドリッチのプレータイムは減少したが、魂のこもったディフェンスや卓越したチャンスメイク能力は健在で、たびたび違いを生み出す働きを披露。その活躍が認められ、昨シーズン限りでの退団が有力視されていた中、契約延長を勝ち取ったことは周知の通りだ。
その一方で、クラブもアンチェロッティ監督も残留を熱望していたクロースが現役を引退。いよいよ世代交代に待ったなしの状況となったのが今シーズンだった。
しかしいざ蓋を開けてみると、マドリーで選手、監督、GMを経験し、現在はメディアのご意見番として活躍するホルヘ・バルダーノ氏が「クロースが中盤でプレーするのではなく、クロースがプレーするエリアがマドリーの中盤だった」と評する絶対的司令塔の抜けた穴はやはり大きく、ここまで中盤は機能しているとは言い難い。それは1枚増やして4-4-2にシフトしたり(第9節のビジャレアル戦)、アントニオ・リュディガーとエデル・ミリトンがオーレリアン・チュアメニを挟む形の可変式の3バックを採用したりと(第10節のセルタ戦)、アンチェロッティ監督の試行錯誤が物語っている。
個々に目を向けると、そのチュアメニに加え、ジュード・ベリンガム、フェデリコ・バルベルデ、エドゥアルド・カマビンガと現在のマドリーの中盤には他のチームが羨む精鋭が揃っている。
しかしそれでも、長短のキックを駆使した配給と緩急をつけた駆け引きを極め、パス中心のクロース、動きも織り交ぜたモドリッチと補完性も抜群だった2人が中盤に君臨していた時代のマドリーに比べれば、今のチームは攻撃が一本調子な面は否めない。そんななか、もはやレギュラーとは目されていないとはいえ、モドリッチの存在感が再び増しているのは自然な流れだ。セルタ戦でも投入されるとすぐに、フリージャーナリストのサンティアゴ・セグロラ氏が「受け手にとってこれ以上ない繊細かつ上質で、相手DFにとっては破壊的な」と表現したスルーパスで、ヴィニシウス・ジュニオールの決勝点をアシストした(試合は2-1でマドリーが勝利)。
大手ラジオ局『カデナ・セール』でマドリー戦の実況を務めるアントニオ・ロメロ氏はそんな大ベテランを、「“クオリティー”から“筋肉”への方向転換が上手く行っていないマドリーで、最も信頼できる解決策であり続けている」と評価する。
この事態を前にして『エル・パイス』は「予期せぬ出来事が起こらない限り、来年の春にモドリッチとクラブは再び去就を話し合うことになるだろう」と論じている。クロースはすでにいないが、ピンチになれば、ベテラン頼みという構図はこれまでと同じだ。モドリッチの活躍は、若手中心の中盤がなかなか機能しないマドリーにおけるいわばアンチテーゼにもなっている。
文●下村正幸
【動画】モドリッチが決勝点をアシスト!
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