クラシコのような大一番で大敗を喫すれば、どんな指揮官も無傷ではいられない。実際、0-4の敗北を境に、現地ではカルロ・アンチェロッティ監督への風当たりが強くなっている。その采配を巡る議論のひとつが、ジュード・ベリンガムの起用法だ。
スペイン紙『AS』のホアキン・マロト記者も、5日のチャンピオンズリーグ(CL)ミラン戦を前に、「アンチェロッティは試行錯誤を続けているが、ミラン戦はその混乱にピリオドを打つ機会にしなければならない。いい加減、ベリンガムを弄ぶことを止めるべきだろう。ポジションをコロコロ変えられた結果、昨シーズンの輝きを失い、ここまでノーゴールだ。昨年の同時期には13ゴールを挙げていた。相手のゴール近くでプレーし、ベストのパフォーマンスを見せていたのに、今季はサイドに張らされ、守備に奔走している。あれではさぞかし退屈だろう」と苦言を呈している。
ベリンガムは得点、ドリブル、パス、守備と何でもできる選手だ。だからこそチーム事情に応じて様々なポジションで起用されるのだが、『スポルト』紙のジョアン・マリア・バトレ氏が「昨シーズン、中央レーンに顔を出してゴールを量産したベリンガムの邪魔になっている」と指摘するキリアン・エムバペの加入がその一因なのは言うまでもない。
とはいえアンチェロッティ監督は、今シーズンについてはベリンガムに得点以外の部分での働きを期待していると公言している。これまでのキャリアスタッツを踏まえれば、昨シーズンは"当たりすぎた"という面も強く、パフォーマンスの優劣を得点数だけで判断すべき選手ではない。実際、同じ『AS』紙でも、「今シーズンはここまでノーゴールだが、私はこれまで以上にベリンガムを尊敬し、評価していることを伝えたい。彼は自分を犠牲にしてでもチームのためにハードワークしている。エムバペの加入に伴い、20m後ろに下がってプレーすることを受け入れ、クラシコでも何度も右サイドバックのように振る舞い、ルーカス・バスケスを助けた。ベリンガムのようなオールマイティーな選手がマドリーにいることはとても贅沢なことだ」と、トマス・ロンセロ氏のように好意的な意見の記者も存在する。
もともとベリンガムは適正ポジションを見極めるのが難しい選手だ。組み立てに関与しながら、随所でゴールに直結する働きを見せ、プレーエリアも広い。そんな中、『ラジオ・マルカ』の人気番組でMCを務めるミゲル・キンターナ氏は、昨シーズンとの違いを"自由度"という言葉を使って分析する。「昨シーズンは右サイドハーフ、トップ下、2トップの一角と、どのポジションでプレーしても、とりわけボール保持の局面で自由度の高い環境を享受していた。しかし今シーズンは、ヴィニシウス・ジュニオールとエムバペにその特権が与えられる中、自由度が限定されてしまっている」
開幕以来、ヴィニシウスとのコンビネーションの不足を指摘されているエムバペだが、ベリンガムとは綺麗なワンツ―の崩しから生まれたアラベス戦の2点目が示すように、息の合ったプレーを見せている。しかし、単純にベリンガムのポジションを相手ゴールに近づけても、トニ・クロースの退団でただでさえ不安定になっているビルドアップが疎かになり、攻守のバランスが低下してしまう。
前述のバトレ氏は、バルサ寄りの識者らしくこう痛烈に皮肉る。「エムバペはプライオリティーの高い補強選手ではなかった。こうなることは予測できたのに、フロレンティーノ・ペレス会長に『ノー』と言えなかった。アンチェロッティは今頃それを後悔し、内心毒ついていることだろう」
文●下村正幸
【動画】CLでも大敗…マドリー対ミラン戦ハイライト
スペイン紙『AS』のホアキン・マロト記者も、5日のチャンピオンズリーグ(CL)ミラン戦を前に、「アンチェロッティは試行錯誤を続けているが、ミラン戦はその混乱にピリオドを打つ機会にしなければならない。いい加減、ベリンガムを弄ぶことを止めるべきだろう。ポジションをコロコロ変えられた結果、昨シーズンの輝きを失い、ここまでノーゴールだ。昨年の同時期には13ゴールを挙げていた。相手のゴール近くでプレーし、ベストのパフォーマンスを見せていたのに、今季はサイドに張らされ、守備に奔走している。あれではさぞかし退屈だろう」と苦言を呈している。
ベリンガムは得点、ドリブル、パス、守備と何でもできる選手だ。だからこそチーム事情に応じて様々なポジションで起用されるのだが、『スポルト』紙のジョアン・マリア・バトレ氏が「昨シーズン、中央レーンに顔を出してゴールを量産したベリンガムの邪魔になっている」と指摘するキリアン・エムバペの加入がその一因なのは言うまでもない。
とはいえアンチェロッティ監督は、今シーズンについてはベリンガムに得点以外の部分での働きを期待していると公言している。これまでのキャリアスタッツを踏まえれば、昨シーズンは"当たりすぎた"という面も強く、パフォーマンスの優劣を得点数だけで判断すべき選手ではない。実際、同じ『AS』紙でも、「今シーズンはここまでノーゴールだが、私はこれまで以上にベリンガムを尊敬し、評価していることを伝えたい。彼は自分を犠牲にしてでもチームのためにハードワークしている。エムバペの加入に伴い、20m後ろに下がってプレーすることを受け入れ、クラシコでも何度も右サイドバックのように振る舞い、ルーカス・バスケスを助けた。ベリンガムのようなオールマイティーな選手がマドリーにいることはとても贅沢なことだ」と、トマス・ロンセロ氏のように好意的な意見の記者も存在する。
もともとベリンガムは適正ポジションを見極めるのが難しい選手だ。組み立てに関与しながら、随所でゴールに直結する働きを見せ、プレーエリアも広い。そんな中、『ラジオ・マルカ』の人気番組でMCを務めるミゲル・キンターナ氏は、昨シーズンとの違いを"自由度"という言葉を使って分析する。「昨シーズンは右サイドハーフ、トップ下、2トップの一角と、どのポジションでプレーしても、とりわけボール保持の局面で自由度の高い環境を享受していた。しかし今シーズンは、ヴィニシウス・ジュニオールとエムバペにその特権が与えられる中、自由度が限定されてしまっている」
開幕以来、ヴィニシウスとのコンビネーションの不足を指摘されているエムバペだが、ベリンガムとは綺麗なワンツ―の崩しから生まれたアラベス戦の2点目が示すように、息の合ったプレーを見せている。しかし、単純にベリンガムのポジションを相手ゴールに近づけても、トニ・クロースの退団でただでさえ不安定になっているビルドアップが疎かになり、攻守のバランスが低下してしまう。
前述のバトレ氏は、バルサ寄りの識者らしくこう痛烈に皮肉る。「エムバペはプライオリティーの高い補強選手ではなかった。こうなることは予測できたのに、フロレンティーノ・ペレス会長に『ノー』と言えなかった。アンチェロッティは今頃それを後悔し、内心毒ついていることだろう」
文●下村正幸
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