海外サッカー

「心からアンスの幸せを願えばこそ」負傷離脱が続くバルサの10番に“環境の変化”を唱える声…「時間を浪費するだけ」「名誉ある退団の道を模索するのはクラブの義務」

下村正幸

2024.11.19

全治4週間の怪我で離脱を強いられたアンス・ファティ。(C)Getty Images

 バルセロナのアンス・ファティがまたしても怪我で戦線離脱した。プレシーズン中に負った怪我の影響で開幕から出遅れ、2か月前(9月19日)のチャンピオンズリーグ(CL)のモナコ戦で復帰。これから徐々に出場機会を増やしていくことを期待されていた最中でのアクシデントだった。

 過密スケジュールを強いられる中、CLのレッドスター・ベオグラード戦(11月6日)は「スタメンで起用するには良いタイミング」という声も出ていた。しかし結局その試合は出番がなく、続くラ・リーガ第13節のレアル・ソシエダ戦(バルサが0-1で敗北)では、ラミン・ヤマルとフェラン・トーレスが怪我で欠場する中、ハンジ・フリック監督がロベルト・レバンドフスキとラフィーニャとともに3トップの一角として先発に起用したのは、中盤が本職のフェルミン・ロペスだった。

 おまけに1点ビハインドの68分、そのフェルミンとポジションを入れ替える形で投入されたが、低調なパフォーマンスに終始。スペイン紙『スポルト』が「率直に言って悪い。常に大きな期待を抱かせるが、ピッチ上で何が起こるかは別の話だ。今後も継続的に出場機会を得るに値するパフォーマンスを見せることができたとは言い難い」と酷評するほどだった。そして今シーズン3度目のインターナショナルブレイクに入り、ソシエダ戦の3日後の11月13日、練習中に右足を負傷。同日に検査を受けた結果、右足大腿二頭筋負傷で全治約4週間と診断された。

 本人はもちろん、復活を願うバルサだけでなく、全てのサッカーファンにとってショックは大きいが、注目に値するのは、バルサ寄りのスポーツ紙『スポルト』のコラムで「環境の変化」を唱える識者の声のトーンが、以前よりも高まっていることだ。大手ラジオ局『オンダ・セロ』でバルサ戦の実況を担当するアルフレッド・マルティネス氏は、今現在のパフォーマンスが高額の年俸に見合っていないことを指摘したうえで、次のように持論を展開する。
 
「名誉ある退団の道を模索するのは、クラブの義務とすら考える。このままでは、ここ数シーズンがそうだったように、時間を浪費するだけだ。今からでも遅くはない。まだ若いのだから。彼はこれからいくらでも、サッカーを楽しみ続けることはできる。しかしそれは、もしかするとバルサでではないかもしれない。重要なのは、現実を直視することだ。アンスは我々が夢を膨らませ、思い描いていた選手になることはないだろう。今の彼は度重なる怪我によって大きな重荷を背負わされている。バルサを去ることは、もしかするとアンスにとって救いとなるかもしれない。過去にもバルサでプレーするという巨大なプレッシャーから解放されることで、ベストの姿を見せられるようになった選手はいた。 アンスにとっても、環境の変化が助けになると考えてみてはどうだろうか?」

 一方、同紙記者のリュイス・ミゲルサンス氏は、「怪我をするたびに、存在感が低下し、乗り越えなければならない困難も大きくなっている。しかし継続的に出場機会を得られる環境に身を置いて、マッチフィットネスを取り戻すことができれば、この苦境から抜け出すことができるかもしれない。今回の負傷を、アンスの未来を改めて考えるきっかけにしなければならない。確実に言えるのは、今の状況をこれ以上長引かせることはできないということだ」と、出場機会の確保を最優先事項に置いた移籍を奨励する。

 前述のマルティネス氏は、「私にアンスに寄り添う気持ちが欠けていると思う人がいたら、あらかじめ謝っておく。ただ、今の彼には他の選択肢はなく、環境の変化が双方にとって最善の道だと私は確信している。可能ならば、私の考えが間違いであってほしい。いずれにせよ、何が起ころうとも、アンスの幸せを心から願っている。彼はそれを手にするに値する選手だ」とコラムを締めくくっている。声のトーンの違いこそあれ、誰もが願っているのはアンス・ファティの完全復活であり、幸せだ。

文●下村正幸

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