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「中盤の便利屋」から「攻守のリーダー」へ――少しの役割の変化でノーゴールを嘆いていたベリンガムが公式戦6戦連発と大復活! 即時奪回の急先鋒としても貢献

下村正幸

2024.12.11

公式戦6試合連発! マドリーのベリンガム(右)にゴールが戻った。(C)Getty Images

 ラ・リーガ第4節のレアル・マドリー対ベティス戦の後だった。マドリーが2-0で勝利したこの試合で、移籍後初得点を含む全2ゴールを叩き出したキリアン・エムバペがミックスゾーンに姿を見せると、「僕みたいな選手が加入すると、そのチームはいろいろなことを変えなければならない。それは分かっている。僕はバカではない」とコメントした。

 実際、マドリーではその後怪我人が続出したこともあり、カルロ・アンチェロッティ監督はエムバペの融合に苦心し、試行錯誤を繰り返したのは周知の通りだ。なかでもトニ・クロースの引退も重なり、シーズン序盤、とくに"便利屋的"な起用をされたのがジュード・ベリンガムだった。

 当初は左サイドでスタートしたが、ヴィニシウスやエムバペと動きが重なってしまうため、バランスを取るために右サイドに移され、0-4で完敗したクラシコでは、守備に追われ、背走を強いられる時間帯が続いた。その右サイドでプレーしていた頃、「我々はベリンガムのゴールを必要としていない。前線には素晴らしいゴールの才能を持った選手が揃っている。我々にとっては今見せている仕事のほうが重要だ」と、アンチェロッティ監督は当時ノーゴールが続いていたベリンガムについて語っていた。約2か月前のことだ。

 そのベリンガムが今、チャンピオンズリーグも含めた公式戦で6試合連発と昨シーズンの前半戦を想起させるようなゴール量産態勢に入っている。最大の違いは、ポジションを左サイドに戻し、ゴール前に顔を出す機会が増えたこと。『ラジオ・マルカ』の人気番組『ラ・ピサーラ・デ・キンターナ』のMC、ミゲル・キンターナ氏は、「アンチェロッティがこの数週間で修正したのは、・ベリンガムの役割だけだ。4-3-3システムの中で彼に自由を与え、ボックス内にスムーズに進入できるようにさせると、再びポケットからこぼれ落ちるようにゴールを決めはじめている」と指摘している。
 
 もちろん、攻守に万能な使い勝手の良さもベリンガムの持ち味のひとつだ。それがアンチェロッティ監督の前述の起用にも繋がるわけだが、マドリーOBのアルバロ・ベニート氏はポジションが左サイドに戻ってからの守備面での貢献にも着目。スペイン紙『AS』のコラムで、「相手陣内の深い位置でボールを奪えれば、そこからのマドリーの攻撃を封じ込めるのは極めて難しくなる。そしてその即時奪回の急先鋒となっているのがベリンガムだ。チームNo.1のコンディションの良さに加え、その守備に取り組む姿勢で、周りの選手を感化している」と分析している。

 ベリンガムがゴール量産態勢に入った時期は、ちょうどヴィニシウス・ジュニオールの離脱の期間と重なる。一方、エムバペは今なお一進一退を繰り返している。すなわちバルサの急失速にも助けられ、首位奪還を完全に視界に捉えたマドリーを牽引しているのはベリンガムで、そのピッチ上での存在感の向上とともに、現地のメディアではその優れたリーダーシップにも注目が集まっている。

 フランス人記者、フレデリック・エルメル氏も『AS』紙のコラムで「人生では学んでも身につかないものがある。それが統率力だ。そしてそのために必要なカリスマ性は、生まれつき持っているか持っていないかの才能だ。マドリーがクロースの引退やダニエル・カルバハルの怪我による長期離脱で、リーダーの役割を担う人物を最も必要としていた中、ベリンガムはその優れた資質を見せている」と綴っている。

 ラ・リーガで5戦連発を完遂したジローナ戦後、アンチェロッティ監督は「ベリンガムは復活した」と語った。守備面での貢献度も絶大だが、ベリンガムの魅力はやはりゴール前でこそ活きる。そのジローナ戦とCLのアタランタ戦では4-2-3-1のトップ下で起用。本来の役割を与えられて躍動する姿を目にして、指揮官もそのことを感じ取っている様子である。

文●下村正幸

【動画】ベリンガムが決勝点をもぎ取ったCLアタランタ戦ハイライト
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