ブラジルは数的優位(55分にフランスDFダヨ・ウパメカノが退場)を得ながらも1-2で敗北。内容でも劣っていた。印象に残ったのは、チームではなく個人のプレーだった。ひとりで局面を打開する選手はいる。例えば後半から出場した右ウイングのルイス・エンリケ(ゼニト)は、純粋な才能と個人技を駆使してフランス守備陣を粉砕した。
だが、それを支える“チーム”がない。唯一の得点も、戦術の結果というよりは偶発的なものだった。ラフィーニャ、ガブリエウ・マルチネッリ(アーセナル)、ヴィニシウス・ジュニオール(R・マドリー)、ルイス・エンリケ、ジョアン・ペドロ(チェルシー)、マテウス・クーニャ(マンチェスター・U)。こうしたFWを擁していたにもかかわらず、ブラジルのゴールはDFブレーメル(ユベントス)がセットプレーの流れから決めたもの。ちなみにブレーメルは試合の前日までスタメンの候補に挙がっていなかった。
スターは揃っている。しかし、チームは存在しない。
この混乱は突然生まれたものではない。2022年カタール大会後、体制は崩壊した。監督は短期間で次々と交代し、暫定政権や兼任体制が続いた。さらにCBF(ブラジルサッカー連盟)自体も政治的混乱に揺れ、長期的なプロジェクトは機能しなかった。その空白の時間が、今になって重くのしかかっている。
もうひとつの問題は、中心選手の不在だ。かつてチームの軸だったネイマール(サントス)は、長く代表から離れている。彼の不在は単なる戦力ダウンではない。チームの構造そのものを失わせた。
誰を中心にチームを組み立てるのか。その答えが、いまだに見つかっていない。
W杯前に残された試合は3回しかない。現地3月31日に米オーランドで行なわれるクロアチア戦、5月31日にリオデジャネイロのマラカナンで行なわれるパナマ戦、本大会直前に行なう6月6日のエジプト戦だ。
これらの試合でチームを構築して戦術を定め、精神面を整えなければならない。他国にとっての仕上げの期間にブラジルは、すべてをやり直す。
ブラジルにサッカーの才能はある。それは疑いようがない。
だが、現代サッカーにおいて重要なのは、個ではなく構造であり、継続性だ。それを組み立てるのには時間が必要だ。だがもう時間がない。方向性も定まっていない。そして、チームもまだ存在しない。
こうした状況でW杯に臨むブラジルは、かつてのような「優勝候補」ではなく、蓋を開けるまで何の予測もできないチームだ。サポーターも、監督も、そして選手自身も、いったいW杯で何が起こるのか分かっていない。
文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガらとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
【動画】数的有利を得たブラジルだったが、フランスに1-2で敗戦
だが、それを支える“チーム”がない。唯一の得点も、戦術の結果というよりは偶発的なものだった。ラフィーニャ、ガブリエウ・マルチネッリ(アーセナル)、ヴィニシウス・ジュニオール(R・マドリー)、ルイス・エンリケ、ジョアン・ペドロ(チェルシー)、マテウス・クーニャ(マンチェスター・U)。こうしたFWを擁していたにもかかわらず、ブラジルのゴールはDFブレーメル(ユベントス)がセットプレーの流れから決めたもの。ちなみにブレーメルは試合の前日までスタメンの候補に挙がっていなかった。
スターは揃っている。しかし、チームは存在しない。
この混乱は突然生まれたものではない。2022年カタール大会後、体制は崩壊した。監督は短期間で次々と交代し、暫定政権や兼任体制が続いた。さらにCBF(ブラジルサッカー連盟)自体も政治的混乱に揺れ、長期的なプロジェクトは機能しなかった。その空白の時間が、今になって重くのしかかっている。
もうひとつの問題は、中心選手の不在だ。かつてチームの軸だったネイマール(サントス)は、長く代表から離れている。彼の不在は単なる戦力ダウンではない。チームの構造そのものを失わせた。
誰を中心にチームを組み立てるのか。その答えが、いまだに見つかっていない。
W杯前に残された試合は3回しかない。現地3月31日に米オーランドで行なわれるクロアチア戦、5月31日にリオデジャネイロのマラカナンで行なわれるパナマ戦、本大会直前に行なう6月6日のエジプト戦だ。
これらの試合でチームを構築して戦術を定め、精神面を整えなければならない。他国にとっての仕上げの期間にブラジルは、すべてをやり直す。
ブラジルにサッカーの才能はある。それは疑いようがない。
だが、現代サッカーにおいて重要なのは、個ではなく構造であり、継続性だ。それを組み立てるのには時間が必要だ。だがもう時間がない。方向性も定まっていない。そして、チームもまだ存在しない。
こうした状況でW杯に臨むブラジルは、かつてのような「優勝候補」ではなく、蓋を開けるまで何の予測もできないチームだ。サポーターも、監督も、そして選手自身も、いったいW杯で何が起こるのか分かっていない。
文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガらとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
【動画】数的有利を得たブラジルだったが、フランスに1-2で敗戦
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