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日本代表

セレソンが体感した恐怖、日本代表への敬意、試合の裏で行なわれた文化交流「ブラジル国民は日本の実力を高く評価し、拍手を送った」【W杯現地発コラム】

THE DIGEST編集部

2026.07.03

日本代表2-1で下したブラジル代表が、ラウンド・オブ16に進出した。(C)Getty Images

日本代表2-1で下したブラジル代表が、ラウンド・オブ16に進出した。(C)Getty Images

 また、ブラジルの解説者たちは、日本の敗因は結局のところ日本に「マリーシア」が欠けていたからだと分析している。それは図らずもジーコが日本サッカー語るうえで何度も繰り返してきた言葉だ。

 後半終了間際、延長戦まであとわずかという時間にクリーンなプレーを続けた。あの時間帯、「マリーシア」を発揮してコーナーフラッグ付近でボールをキープし、戦術的なファウルを犯して時間を稼ぐべきだった。そうすれば、最後のボールをブラジルに献上してしまう事態は避けられたはずだ。

 ブラジルのマスコミは、常にスーツ姿でエレガントな森保一監督の品格ある振る舞いも大いに称賛していた。

 サンパウロの日刊紙『Folha de S.Paulo』は、「森保監督が手帳にメモを取る、あの有名な姿が見られなくなるのは寂しい」と報じた。また、ピッチの中央で全選手を集めて感謝の言葉を述べ、サポーターに向かって深くお辞儀をしたその仕草は、礼儀正しさとフェアプレーの手本だ」と伝えた。

 この品格は、日本のロッカールームでも見られた。選手たちはロッカールームを完璧に清掃し、ヒューストン市全体に向けた英語で書かれた感謝の手紙を残していった。

 日本と対戦したブラジルの選手たちも日本をリスペクトしていた。通常、ブラジルは勝利するとロッカールームで大音量の音楽をかけて祝うが、ヒューストンでの祝賀会はとても控え目なもので、大きな音楽はなかった。

 それは日本がこれまで培ってきたサッカーに対する敬意、そしてその日、彼らが見せたプレーに対する敬意の表われだった。

 また試合の裏では、あまり知られていない日本とブラジルの文化交流もあった。

 日本のスタッフは対戦相手のブラジル代表チームに美しい装飾が施された木製の箸と、日本の伝統菓子を贈ってくれたのだ。そこでブラジル代表の調理スタッフは、日本チームが帰国する前にと急遽、温かいポン・デ・ケージョ(もちもち食感が魅力のチーズパン)やブリガデイロ(伝統的なチョコレート菓子)などを作ってお返ししたのだ。

 
 試合前にあったFW塩貝健人のブラジル代表を軽視するような発言には、多くのブラジル人、そして選手自身も反応したのは皆も知るところだろう。あれは実際、ブラジル人の誇りを大いに傷つけた。

 だが、ブラジルのメディアの一部、例えばリオデジャネイロのラジオ局『Radio Tupi』は、若い塩貝がロッカールームで泣いていたというニュースも報じている。試合前の強気の発言が、結局はブラジル人の誇りを煽ってしまったと悟ったためだと説明した。

 塩貝の発言に対する論争もあったが、試合後、ブラジル国民は総じて日本の実力を高く評価し、拍手を送った。日本代表は規律正しく、戦術的に賢く、そしてスピードのある見事なサッカーを披露した。

 そしてそのプレーには、どこかブラジルらしい息遣いも感じられた。多くのブラジル人は実際にそう思った。それは、ブラジルと日本サッカーの長きにわたる絆の深さを物語っている。

「ジーコは日本人にサッカーを教えることを、もう少し控えるべきだったかもしれない」2002年W杯優勝メンバーのデニウソンは、『TV Globo』の番組で冗談交じりにこう語った。「日本は強くなりすぎた。おかげで散々苦しめられた。ジーコ、次はもう少し手加減してくれよ!」

 日本をよく知るアルシンドはここ数日、TVにひっぱりだこだ。日本のことを聞かれるたびに彼はこう繰り返している。

「(Jリーグでプレーした)我々は全力で献身的に、日本人を指導してきた。でも彼らがこれほど早く、これほどまでに強くなるとは想像もしていなかったよ」

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中の現場を取材。多数のメディアで活躍する。過去にはFIFAの広報担当を務め、1998年と2002年のW杯ではブラジル代表の広報スタッフとして活躍。ジーコやカフー、ドゥンガらとの親交も厚い。スポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。

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