●エマヌエレ・ルッリ(ローマ/イタリアU-21代表DF/19歳)
開幕節最大の注目カードだったローマ対フィオレンティーナで、調整が遅れている新戦力のアルゼンチン代表DFナウエル・モリーナに代わって右WBに入り、3点目のきっかけを作ったタイミングのいい裏抜けとその直後のセカンドボールへのタックル、攻守両局面で存在感を発揮した19歳の右SB/WB。
傑出した走力を武器に大外レーンを上下動する古典的なタイプで、縦に抜け出すスピードと推進力、サイド深くからの右足クロスが持ち味だ。元々はセントラルMFとして育ったこともあり、ビルドアップでのパスワーク、攻守両局面の状況判断力も高いレベルにある。
ローマ近郊で生まれ育った生粋のロマニスタ。地元の育成クラブから14歳でローマのアカデミーに入り、各年代で主力を担い今夏トップチームに昇格という「ローマっ子のエリートコース」を歩んだ。90分を通して高強度を維持できる強靭なフィジカルと走力、攻守両局面の安定度を武器に、3バックシステムのWBとして実質的な貢献を果たせるジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督好みのプロフィールの持ち主だ。
モリーナが戻った後も重要なバックアップとして、一定の出場機会を得る可能性は十分だ。この世代は競争が激しいこともあり、年代別のイタリア代表ではまだほとんど実績がないが、晩成型のタイプがチャンスを得て一気に成長を見せるのはよくあること。右WBの二番手としてコンスタントな出場機会を得られることを期待したい。
●マッテオ・パルマ(ウディネーゼ/ドイツ、イタリア国籍DF/18歳)
開幕節の初戦となった土曜夕方のウディネーゼ対コモは、セリエA屈指の華麗な攻撃サッカーを売り物にするコモを、ウディネーゼがアグレッシブに前に出るディフェンスで困難に陥れ、1-1の引き分けに持ち込む意外な展開となった。
その中にあって、ウディネーゼの3バックの中央に入り、前半45分を通してコモのCFアナスタシオス・ドゥビカスにほとんど仕事をさせなかったのが、194センチの大型CBマッテオ・パルマ。弱冠18歳とは思えない落ち着き払った振る舞いと的確な読みで、ボールと相手の動きに応じたポジショニングとマーキング、縦パスのタイミングに合わせた鋭い飛び出しによる迎撃、左右のパートナーと連携した背後のスペース管理などをほぼ完璧にこなした。内転筋に違和感を覚えたため、前半終了後に負傷交代となった(全治3~4週間と判明)。
イタリア人の父とカメルーン系ドイツ人の母の間にベルリンで生まれ、ヘルタ・ベルリンのアカデミーから2022年に14歳でウディネーゼに移籍。2024年9月には16歳でトップチームデビューを果たした早熟のタレントだ。ドイツ、イタリア両国のパスポートを持ち、育成年代代表ではイタリアU-15でデビューした後、U-16、U-17ではドイツ代表を選んでいる。
昨シーズンはウディネーゼのトップチームで開幕を迎えたが、出場機会を得るため1月にセリエBのサンプドリアにレンタル移籍して11試合(うちスタメン9試合)に出場。ウディネーゼに戻った今夏に2031年まで契約を延長した。
長身を利した空中戦の強さはもちろん、的確な読みとマーキングによる対人守備の強さ、大柄な体格に比して必要十分なスピード、シンプルながら正確なパスワークによるビルドアップへの貢献と、非常に完成度の高いCBで、ウディネーゼが契約更新時に「同年代では欧州最高レベルの逸材」と謳ったほど。ウディネーゼでの活躍と今後のステップアップはもちろん、ドイツとイタリア、どちらの代表を最終的に選ぶのかも楽しみだ。
●マティス・ムート(モンツァ/イタリア国籍MF/19歳)
開幕戦で4-1と大勝したインテルの影に隠れてあまり注目を浴びなかったが、敗れたモンツァは平均年齢23.5歳と、開幕節で最も若い顔ぶれをピッチに送り出したチームだった。その中で最もポジティブなパフォーマンスを見せたのが、3-4-2-1の中盤センターでレジスタを務めた19歳のマティアス・ムートだ。
昨シーズンまではプリマベーラ(U-19)でプレーしており、今季トップチームに昇格してこれがセリエAデビュー戦。にもかかわらず、多くの選手が震え上るサン・シーロの大舞台でまったく物怖じすることなく、左足の柔らかいタッチから質の高い縦パスを繰り返し前線に送り込み、29分には今季ベンフィカから加入した21歳のポルトガル人CFグスタボ・ヴァレラの同点ゴールをアシストするなど、見る者を唸らせる際立ったプレーを見せた。これまでまったく無名であり、年代別代表への招集歴もまったくないことを考えれば、この開幕節最大の「発見」は彼かもしれない。
イタリア人の父とフランス人の母の下2007年に生まれ、12歳からモンツァのアカデミーで育った生え抜き。テクニックとプレービジョン、そして創造性を武器とする左利きのファンタジスタで、これまではトップ下やインサイドハーフで攻撃的MFとしてプレーしてきた。昨シーズンはプリマベーラで主に3-5-2の右インサイドハーフとして33試合に出場し、3得点・4アシスト。ゴールに近いところでプレーするにはスピードとパワーがやや不足しており、単独突破よりもコンビネーションやスルーパスで局面を打開するタイプだった。
トップチームがセリエAに復帰した今シーズン、監督の座についたイバン・ユリッチは、師匠であるガスペリーニの影響を強く受けたマンツーマンベースの3-4-2-1システムの使い手。ムートのプレービジョンとパスセンスに目をつけ、シャドーではなく1列低いセントラルMFとしてスタメンに抜擢して、司令塔の鍵を預けた。インテル戦では、オールコートマンツーマンという指揮官の戦術に対応して、相手のレジスタであるハカン・チャルハノールをマーク。頻繁に最終ラインまで下がる相手にもしっかりついて行き、カバーシャドーの位置取りで危険な縦のパスコースを切る仕事を忠実にこなした。
ボール支配率30%という一方的な試合ゆえ、プレー機会は決して多くなかったが、シンプルな捌きだけでなく、同点ゴールのアシスト、さらには局面を前進させる縦パスを何度か通し、その隠れた才能の片鱗を垣間見せた。サン・シーロでのセリエAデビュー戦、しかも一方的な劣勢に立たされた試合で、十分にポジティブなパフォーマンスを見せたこと自体、強靭なパーソナリティーの持ち主である証拠だ。
縦の推進力と運動量を備えた強靭なMFを次々と輩出する一方で、テクニックとビジョン、そしてパーソナリティーを備えた司令塔がなかなか生まれないのが昨今のイタリアだけに、代表視点からも今後の大きな成長に期待がかかる
文●片野道郎
【現地発コラム】完成度の違いを見せつけ圧倒したローマ、0-4完敗のフィオレンティーナは発展途上チームの脆さ露呈も…数少ない収穫は
開幕節最大の注目カードだったローマ対フィオレンティーナで、調整が遅れている新戦力のアルゼンチン代表DFナウエル・モリーナに代わって右WBに入り、3点目のきっかけを作ったタイミングのいい裏抜けとその直後のセカンドボールへのタックル、攻守両局面で存在感を発揮した19歳の右SB/WB。
傑出した走力を武器に大外レーンを上下動する古典的なタイプで、縦に抜け出すスピードと推進力、サイド深くからの右足クロスが持ち味だ。元々はセントラルMFとして育ったこともあり、ビルドアップでのパスワーク、攻守両局面の状況判断力も高いレベルにある。
ローマ近郊で生まれ育った生粋のロマニスタ。地元の育成クラブから14歳でローマのアカデミーに入り、各年代で主力を担い今夏トップチームに昇格という「ローマっ子のエリートコース」を歩んだ。90分を通して高強度を維持できる強靭なフィジカルと走力、攻守両局面の安定度を武器に、3バックシステムのWBとして実質的な貢献を果たせるジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督好みのプロフィールの持ち主だ。
モリーナが戻った後も重要なバックアップとして、一定の出場機会を得る可能性は十分だ。この世代は競争が激しいこともあり、年代別のイタリア代表ではまだほとんど実績がないが、晩成型のタイプがチャンスを得て一気に成長を見せるのはよくあること。右WBの二番手としてコンスタントな出場機会を得られることを期待したい。
●マッテオ・パルマ(ウディネーゼ/ドイツ、イタリア国籍DF/18歳)
開幕節の初戦となった土曜夕方のウディネーゼ対コモは、セリエA屈指の華麗な攻撃サッカーを売り物にするコモを、ウディネーゼがアグレッシブに前に出るディフェンスで困難に陥れ、1-1の引き分けに持ち込む意外な展開となった。
その中にあって、ウディネーゼの3バックの中央に入り、前半45分を通してコモのCFアナスタシオス・ドゥビカスにほとんど仕事をさせなかったのが、194センチの大型CBマッテオ・パルマ。弱冠18歳とは思えない落ち着き払った振る舞いと的確な読みで、ボールと相手の動きに応じたポジショニングとマーキング、縦パスのタイミングに合わせた鋭い飛び出しによる迎撃、左右のパートナーと連携した背後のスペース管理などをほぼ完璧にこなした。内転筋に違和感を覚えたため、前半終了後に負傷交代となった(全治3~4週間と判明)。
イタリア人の父とカメルーン系ドイツ人の母の間にベルリンで生まれ、ヘルタ・ベルリンのアカデミーから2022年に14歳でウディネーゼに移籍。2024年9月には16歳でトップチームデビューを果たした早熟のタレントだ。ドイツ、イタリア両国のパスポートを持ち、育成年代代表ではイタリアU-15でデビューした後、U-16、U-17ではドイツ代表を選んでいる。
昨シーズンはウディネーゼのトップチームで開幕を迎えたが、出場機会を得るため1月にセリエBのサンプドリアにレンタル移籍して11試合(うちスタメン9試合)に出場。ウディネーゼに戻った今夏に2031年まで契約を延長した。
長身を利した空中戦の強さはもちろん、的確な読みとマーキングによる対人守備の強さ、大柄な体格に比して必要十分なスピード、シンプルながら正確なパスワークによるビルドアップへの貢献と、非常に完成度の高いCBで、ウディネーゼが契約更新時に「同年代では欧州最高レベルの逸材」と謳ったほど。ウディネーゼでの活躍と今後のステップアップはもちろん、ドイツとイタリア、どちらの代表を最終的に選ぶのかも楽しみだ。
●マティス・ムート(モンツァ/イタリア国籍MF/19歳)
開幕戦で4-1と大勝したインテルの影に隠れてあまり注目を浴びなかったが、敗れたモンツァは平均年齢23.5歳と、開幕節で最も若い顔ぶれをピッチに送り出したチームだった。その中で最もポジティブなパフォーマンスを見せたのが、3-4-2-1の中盤センターでレジスタを務めた19歳のマティアス・ムートだ。
昨シーズンまではプリマベーラ(U-19)でプレーしており、今季トップチームに昇格してこれがセリエAデビュー戦。にもかかわらず、多くの選手が震え上るサン・シーロの大舞台でまったく物怖じすることなく、左足の柔らかいタッチから質の高い縦パスを繰り返し前線に送り込み、29分には今季ベンフィカから加入した21歳のポルトガル人CFグスタボ・ヴァレラの同点ゴールをアシストするなど、見る者を唸らせる際立ったプレーを見せた。これまでまったく無名であり、年代別代表への招集歴もまったくないことを考えれば、この開幕節最大の「発見」は彼かもしれない。
イタリア人の父とフランス人の母の下2007年に生まれ、12歳からモンツァのアカデミーで育った生え抜き。テクニックとプレービジョン、そして創造性を武器とする左利きのファンタジスタで、これまではトップ下やインサイドハーフで攻撃的MFとしてプレーしてきた。昨シーズンはプリマベーラで主に3-5-2の右インサイドハーフとして33試合に出場し、3得点・4アシスト。ゴールに近いところでプレーするにはスピードとパワーがやや不足しており、単独突破よりもコンビネーションやスルーパスで局面を打開するタイプだった。
トップチームがセリエAに復帰した今シーズン、監督の座についたイバン・ユリッチは、師匠であるガスペリーニの影響を強く受けたマンツーマンベースの3-4-2-1システムの使い手。ムートのプレービジョンとパスセンスに目をつけ、シャドーではなく1列低いセントラルMFとしてスタメンに抜擢して、司令塔の鍵を預けた。インテル戦では、オールコートマンツーマンという指揮官の戦術に対応して、相手のレジスタであるハカン・チャルハノールをマーク。頻繁に最終ラインまで下がる相手にもしっかりついて行き、カバーシャドーの位置取りで危険な縦のパスコースを切る仕事を忠実にこなした。
ボール支配率30%という一方的な試合ゆえ、プレー機会は決して多くなかったが、シンプルな捌きだけでなく、同点ゴールのアシスト、さらには局面を前進させる縦パスを何度か通し、その隠れた才能の片鱗を垣間見せた。サン・シーロでのセリエAデビュー戦、しかも一方的な劣勢に立たされた試合で、十分にポジティブなパフォーマンスを見せたこと自体、強靭なパーソナリティーの持ち主である証拠だ。
縦の推進力と運動量を備えた強靭なMFを次々と輩出する一方で、テクニックとビジョン、そしてパーソナリティーを備えた司令塔がなかなか生まれないのが昨今のイタリアだけに、代表視点からも今後の大きな成長に期待がかかる
文●片野道郎
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