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日本代表

思慮深かった“オシム語録”の素晴らしさとは何か。羽生直剛が語った恩師が説こうした「サッカーの本質」

THE DIGEST編集部

2023.01.01

ジェフでオシムの教えを学んだ羽生。彼にとって名将との日々はいかなるものだったのだろうか。写真:THE DIGEST

ジェフでオシムの教えを学んだ羽生。彼にとって名将との日々はいかなるものだったのだろうか。写真:THE DIGEST

 それまで日本で行なわれていたものとは一線を画すオシムのトレーニング方法とアプローチの仕方に、選手はもちろん、コーチたちも最初は戸惑いを隠せなかったという。ただ徐々に、そして確実に成長していく実感こそが、オシムの手腕がいかに優れているのかの証明だったと羽生は振り返る。

「若い選手だけではなくて、ベテラン選手すら上手くなっていくのがわかったんです。身体がでかくて、キープして1人で抜けてというプレーが得意で、でも逆にチームとして働く意識が薄い傾向にあった選手ですら、オシムさんの練習をずっとやることで、それなりに考えて、チームのためのプレーができるようになっていくわけです。そうやって、いろんなタイプの選手それぞれにそれぞれのアプローチをして、それぞれが刷り込まれていっちゃうっていう感じ。それがすごいなと思ってました」

 サッカーの試合には様々な状況があり、それぞれに準備や対処が必要になる。数多に存在する選択肢から、どのように決断し、最適なプレーを選ぶかは、選手個々が頭を回転させて、周りの選手の動き、相手の対応を読み取る必要がある。そして求められるベストなプレーを瞬時に把握し、アジャストしていけるようにするためには、日々の練習から積み重ねていく必要がある。
 
 鍛錬を重ねていけば、自分の動きだけではなく、近くにいる仲間、それも1人の動きだけではなく、「誰かがこう動いたから、相手の位置がずれて、味方がそこへ入ろうとしているから、そこをカバーしようと他の相手がスライドして、だから反対サイドに大きくスペースが生まれるから、そこへパスを展開しよう」という連鎖的なプレーの中で自分が最適解を見出すサイクルができるわけだ。

 こうした新たなアプローチの仕方を日本へもたらしてくれたのは、おそらくオシムが初めてだった。

 はたしてサッカーとはどんなスポーツか――。そんな本質的な部分から丁寧に伝えてくれたオシムの教えを、僕らはこれからも大切に継承していかなければならない。

取材・文●中野吉之伴
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