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海外サッカー

「クラブ史における最大の“鬼”」 ルーマニアのレジェンド守護神の死を受けてバルサ側メディアが歴史的屈辱を回想! 宿敵マドリーも「英雄」との逸話を紹介

THE DIGEST編集部

2024.12.05

 ただ、官製クラブとして不正による優遇を受ける中で、ドゥカダムが八百長への連座を強要されるもこれを断ったことで、彼のクラブでの(そして国での)立場が悪いものになっていたともいわれ、またステアウア加入時に約束されていた報酬は払われていなかったとルーマニアのスポーツ専門メディア『iAM SPORT』は報道。それゆえに引退後の彼の生活は苦しく、欧州制覇時の栄光のGKグローブをわずか3000ドル(約45万円)で売却することを余儀なくされたのだと伝えている。

 国に翻弄される人生を歩むことになったドゥカダムにとって、最大の喜びを味わったのがやはり欧州制覇である。決勝の開催地にちなんで「セビージャの英雄」と彼は呼ばれ続けたが、一方で圧倒的有利が予想されながらもゴールが奪えず、PK戦では4人全員が失敗、さらにテリー・ベナブルス監督から途中交代を命じられたことに怒った中心選手ベルント・シュスターが勝手にバルセロナに帰ってそのまま退団となるなど、大きなダメージを負ったバルサにとっては「セビージャの悲劇」としてこの試合は記憶されている。

 カタルーニャの日刊紙『EL NACIONAL.CAT』は、「ドゥカダムはバルサの歴史において、最大の『鬼』のひとりとして知られ、これからも語り継がれる存在である。彼は1986年にブラウグラナ(バルサカラーの「青とエンジ」)に悪夢をもたらした立役者である」と報じ、『MUNDO DEPORTIVO』紙は「比類なき奇跡的なパフォーマンス」「再現不可能」と改めて賛辞を贈った他、彼が後に「あれは論理的な判断で、キッカーの動きを100%読んでいた」と語ったエピソードなども紹介した。
 
 そして、バルサの宿敵であるレアル・マドリーも、このルーマニア人の逝去に反応。バルサの悲しみはマドリーにとっての喜びとばかりに、バルサの当時の悲願だった初欧州制覇を阻んだドゥカダムを「同志」として称えたのが、2012年にルーマニアに設立されたマドリー公認のファンクラブ「Dancia Blanca」で、彼は正式メンバーとして迎え入れられ、メンバーとともにマドリーの試合を多くテレビ観戦したと同国のスポーツ専門メディア『gsp.ro』は伝えている。

 同ファンクラブのソリン・バルブ会長は、「マドリード周辺やバルセロナが好まれない地域で、ドゥカダムは今でも非常に評価されている。当時、試合前から勝利を確信して鼻高々だったバルサに対し、彼が成し遂げたことは歴史的で、スペイン国王からも祝福を受けた」と語り、また「のちにフロレンティーノ・ペレス会長から(サンチャゴ・ベルナベウでの)特別席での試合観戦にも招待されたが、ドゥカダムは飛行機が怖いため、残念ながら実現しなかった」というエピソードも明かした。

 キャリアや実働時間は決して多くなく、代表キャップ数も2に止まったドゥカダムが1986年に放った一瞬の輝きは、今でも十分なインパクトを人々に与え、今後も偉大なパフォーマンスとして語り継がれていくに違いない。改めてレジェンド守護神の冥福を祈りたい。

構成●THE DIGEST編集部

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