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ナポリのクバラツヘリア、7000~8000万ユーロで今冬にもパリSGへ移籍「看板選手の退団は痛手だが、必ずしもネガティブな側面だけではない」両者の思惑とは?【現地発コラム】

片野道郎

2025.01.14

加入1年目の22-23シーズン、まったくの無名選手だったクラバツヘリアは無類の突破力でチャンスを量産。一躍時の人となり、ナポリの33年ぶりの優勝に大きく貢献した。(C)Getty Images

加入1年目の22-23シーズン、まったくの無名選手だったクラバツヘリアは無類の突破力でチャンスを量産。一躍時の人となり、ナポリの33年ぶりの優勝に大きく貢献した。(C)Getty Images

 しかし、それに強硬に反対したのが、今シーズンからの監督就任が決まっていたコンテだった。優勝を争うチームに立て直すミッションを受け入れるにあたって、チームの編成・強化についても大きな権限を要求した新監督にとって、すでにクラブとの間で退団・移籍についての合意が成立していたエースストライカーのヴィクター・オシメーンに加えて、クバラツヘリアまでも失うことは到底許容できなかった。

 コンテの強い要望を受けたデ・ラウレンティス会長は、EURO2024が開催中だったドイツまで足を運び、ジョージア代表の合宿地を直接訪問して説得を試みる。その甲斐あって、チーム最高年俸(600万ユーロ=約9.7億円)での契約延長を条件に残留すると話がまとまり、クバラツヘリアは今シーズンもナポリでプレーを続けることになった。

 しかし、シーズンが始まっても契約延長の交渉は進まなかった。今度はクバラツヘリア側が交渉の先延ばしを続けていたのだ。その間、代理人は背後でパリSGと連絡を取り合っていた。

 FIFAの移籍ルールでは、契約期間中の選手に他クラブが接触することを原則として禁じている(例外は契約満了6か月前以降)。しかしこのルールを律義に守っている者など誰ひとりいないのが、欧州サッカー界の現実だ。

 パリSGは、リーグ1でこそダントツで首位を走っているものの、最大の目標であるチャンピオンズリーグでは、今シーズンからスタートした新フォーマットによるリーグフェーズ全8節中6節を終えた時点で、32チーム中21位に沈んでいる。優勝どころかベスト16進出すらできないまま敗退する可能性すらある状況だ。それもあって、冬の移籍市場でさらなる戦力強化を図るべく、あらためてクバラツヘリアの獲得に乗り出してきたというわけだ。
 
 一度は受け容れた契約延長を先延ばしにしていたクバラツヘリア側が、今冬もしくは来夏の移籍を視野に入れていることは間違いない。話が進まない現実に直面した時点で、ナポリもそれを認識せざるをえなかったはずだ。とはいえ、シーズン途中の1月というタイミングでそれがやって来るところまでは、予想できていたかどうか。

 コンテ監督は会見でこうも語っている。

「私は昨夏、クラブと選手の双方を、今後も一緒にやっていくと説得できたと思っていた。移籍できなかったのは私が反対したせいだと選手から思われることは望んでいない。昨夏はあえてそれを試みたが、おそらくそのやり方は傲慢過ぎたのかもしれない」

 ナポリにとって、クバラツヘリアという看板選手に「逃げられる」のは、戦力的にもイメージ的にも小さくない痛手であることは間違いない。コンテの「ナポリが選手にとってステップアップの踏み台になることは受け容れられない」というコメントは、それを象徴するものだ。しかし、必ずしもネガティブな側面だけではないのも事実ではある。

 パリSGとの間で進んでいる交渉は、移籍金7000~8000万ユーロ(約113~129億円)という線で合意に近づいていると報じられている。1330万ユーロで獲得した選手(しかもその60%は減価償却済み)をその金額で売却できれば、ナポリは実質的にほぼ全額を利益として計上できる。その一部を後釜となる選手の獲得に投じれば、戦力的にはある程度のリカバーが可能だ。

 しかも左ウイングには、昨夏に獲得してようやくイタリアの環境に慣れてきたダビド・ネーレスが使えるメドが立っており、穴埋めの緊急性はそれほど高くない。今シーズンのナポリは、欧州カップ戦に出場していないうえ、コッパ・イタリアも敗退済み。シーズンの残りはセリエAの18試合のみと、陣容の厚みはそれほど重要ではないと言うこともできる。

 後釜候補としてコンテ監督が第一候補に挙げていると伝えられるのは、アレハンドロ・ガルナチョ(マンチェスター・U)だ。さらに、エドン・ゼグロバ(リール)、ダン・エンドイェ(ボローニャ)、フェデリコ・キエーザ(リバプール)の名前も挙がっている。ただ、キエーザに関しては本人がリバプール残留を望んでおり、実現の可能性は低いという報道もある。

 いずれにしても、ここまでの流れを見る限り、この1月の移籍ウィンドウでクバラツヘリアのパリSG行きが決まる可能性はきわめて高いと言えるだろう。今後の展開を見守りたい。

文●片野道郎

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