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ヴラホビッチがユベントス退団へ「契約延長が合意しない限り、売却はほぼ間違いない」セリエA最高年俸1200万ユーロが「過大な負担」【現地発コラム】

片野道郎

2025.01.17

ヴラホビッチはセリエA16試合で7ゴールを決めている。(C)Getty Images

ヴラホビッチはセリエA16試合で7ゴールを決めている。(C)Getty Images

 2026年6月までの5年契約の4年目を迎えた今シーズン、ヴラホビッチの手取り年俸は、それまでの700万ユーロ(約11億円)から1200万ユーロ(約19億円)へと大幅に跳ね上がり、セリエA最高額となっている(2位はインテルのラウタロ・マルティネスで900万ユーロ+ボーナス)。これは、移籍当時(アンドレア・アニェッリ前会長時代)に交わした契約がそういう内容になっていたためだ。

 しかし、そのアニェッリの引責辞任(22年末)をもたらした粉飾決算(とその背景にあった財政悪化)で大きなダメージを受け、新たな経営陣の下で人件費を大幅に削減しての再建に取り組んでいる現在のユベントスにとって、この高年俸は明らかに過大な負担となっている。ピッチ上のパフォーマンスがそれに見合っているとは言えない現状ならなおさらだ。

 それもあってクラブはヴラホビッチに、年俸ダウンを織り込んだ契約延長を提案しているのだが、選手サイドは今のところこれに応じていない。提案の内容は、現在の年俸1200万ユーロを固定給1000万ユーロ(約16億円)+ボーナスという形に変更する代わりに、契約を1年あるいは2年延長するというもの。

 ユベントスにとって最悪のシナリオは、来シーズンも今のまま1200万ユーロの年俸を支払い続けたうえに、契約満了を迎えて移籍金も残さずチームを去るという展開だ。それを絶対に避けようと思えば、ヴラホビッチに契約延長を呑んでもらうか、そうでなければ契約が残っているうち(つまり今冬か今夏)に売却するかの二者択一しかない。

 つまり、契約延長が合意しない限り、近いうちの売却はほぼ間違いないということだ。しかし、現在のパフォーマンスが最後まで続くようなら、獲得時に支払った移籍金(8000万ユーロ=当時約104億円)はおろか、現在の市場評価額(6000万ユーロ=約96億円)も大きく下回る金額でしか買い手がつかない可能性も小さくない。そうでなくとも、契約が残り1年となった選手は足下を見られて買い叩かれるのが、移籍マーケットの厳しい現実だ。
 
 だとすれば、もしそれなりの値段がつくのであれば今冬にでも思い切って手放し、その穴はコロ・ムアニで何とか埋めて、今シーズン終了後に改めてエースストライカーを獲得するのも、ひとつの選択肢として現実味を帯びてくるというわけだ。

 チアゴ・モッタ監督は常々「ドゥシャンは我々にとって重要な選手だ」と言い続けてきた。しかし彼は、上で見たアルテタ(アーセナル)やルイス・エンリケ(パリSG)の両監督と同様、ポジショナルプレー志向の強い戦術を打ち出しており、数少ないヴラホビッチの不在時には、ティモシー・ウェア、ケナン・ユルドゥズ、ニコラス・ゴンサレス、果てはウェストン・マッケニーまでを「偽9番」として起用してきている。「もしも」の場合には、後半戦をそれ(+コロ・ムアニ)でしのぐ覚悟ができているかもしれない。

 もちろん現実的には、ヴラホビッチが(少なくとも今シーズン末までは)ユベントスに留まる可能性の方がずっと大きい。その場合は、ヴラホビッチとコロ・ムアニが同時にピッチに立つ可能性もある。

 コロ・ムアニも「本職」は同じCFだが、左右のウイングとしても機能できるのがヴラホビッチとは異なるところ。ヴラホビッチがパワー系ならコロ・ムアニはスピード系で、ドリブルでの仕掛けも含めてよりボールを持てるタイプだ。もし同時起用するならば、コロ・ムアニを左ウイングに入れて、ユルドゥズをトップ下に移し、トゥーン・コープマイネルスを一列下げてセントラルMFとして起用するといった、より攻撃的な布陣も考えられる。

 はたしてヴラホビッチは今冬にユベントスを去ることはありえるのか。それも含めて、ピッチ上とピッチ外の双方でここからのクラブの動きが気になるところだ。

文●片野道郎


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