真紅のドレスに散りばめられたラメが、スタジアム照明に反射し、キラキラと光る。編み込んだ長髪には、ドレスと同じ色の複数の髪留めが。よく見ればそれら一つひとつは、バラの花を模していた。
ニューヨークで開催中のテニス四大大会「全米オープン」1回戦。過去2度、この大会を制した大坂なおみが、女王の風格と歓声をまといながら、悠然とルイアームストロングスタジアムに姿を現した。
英語圏でバラは、美しい花弁と鋭利な棘を持つことから、「良いことと、悪いことの共存」の象徴として使われるという。
ならば大坂の今大会開幕戦は、まさにバラに相応しかった。対戦相手のグリート・ミネン(ベルギー)は、現在106位。全米オープンでは過去2度3回戦に進んでいるが、実績や経験では大坂がはるかに上回る。
ただ、「とても緊張していた」と言う大坂のプレーは、やや安定感を欠いた。3ゲーム目でブレークするも、直後のゲームでブレークされる。大坂らしい火を吹くフォアのウイナーが飛び出す一方で、早いミスで流れに乗り切れない場面も続いた。
それでも、手にしたブレークのチャンスは、全て生かし切るあたりはさすが。第1セットは終盤にかけ、相手のミスにも助けられ6-3で奪取。
第2セットは、早々にブレークするも追いつかれ、さらにブレーク数で先行されて追う展開に。自分に苛立ち、ラケットを投げる場面もあった。
それでも追い込まれるほどに、サービスもリターンも明らかに攻撃性が増す。このセットも終盤に3ゲーム連取で追い抜いて、終わってみれば6-3、6-4の快勝と言えるスコアで試合を締めた。
試合後の大坂は、今日の試合における“棘”――すなわち「良くなかった点」として、精神面を挙げた
「もっと良い姿勢で試合を戦うべきだった。今日はとてもストレスを感じていた。初戦だし、この大会は私にとって本当に大切だから、勝ちたいと思いすぎてしまった。本来なら結果ではなく、もっとプロセスについて考えるべきだったけれど...、何はともあれ、勝てたことは良かった」
神妙な面持ちで振り返る彼女は、“バラの花”――つまり「良かった」ことに話題が及ぶと、パッと顔をほころばせて言った。
「今日の試合で、もっとも楽しかったパートは、これね!」
そう言い会見室のデスクの下から、小さな赤いぬいぐるみを取り出す。
「今日一番良かったことは、この小さな“ラブブ”ちゃん。“ビリー・ジーン・ブリング”が受け入れられるか不安だったけれど、この子がみんなを笑顔にしてくれたので良かった」
大坂が手にした“ラブブ”とは、香港のデザイナーが制作したマスコットキャラクター。世界中で人気を博し、ナイキともコラボレーションしている。大坂はそのラブブを、テニス界のレジェンド、ビリー・ジーン・キング氏にかけて、ビリー・ジーン・ブリングと命名。大坂のバッグにぶら下がり、全米オープンデビューを果たした。
真紅のウェアに身を包むビリー・ジーン・ブリングが、最も笑顔にした相手は、他ならぬ大坂だろう。愛らしいこの“花”が、棘を覆い包めるか? 問われるのは、ここからだ。
現地取材・文●内田暁
【動画】勝利後のオンコートインタビューで“ラブブ”の名前を紹介する大坂なおみ
【画像】大坂なおみはじめ、2025全米オープンを戦う女子トップ選手たちの厳選フォト
【関連記事】大坂なおみが全米オープン初戦に勝利! 粘る相手を振り切り「前向きな気持ちを保とうと努力した」<SMASH>
ニューヨークで開催中のテニス四大大会「全米オープン」1回戦。過去2度、この大会を制した大坂なおみが、女王の風格と歓声をまといながら、悠然とルイアームストロングスタジアムに姿を現した。
英語圏でバラは、美しい花弁と鋭利な棘を持つことから、「良いことと、悪いことの共存」の象徴として使われるという。
ならば大坂の今大会開幕戦は、まさにバラに相応しかった。対戦相手のグリート・ミネン(ベルギー)は、現在106位。全米オープンでは過去2度3回戦に進んでいるが、実績や経験では大坂がはるかに上回る。
ただ、「とても緊張していた」と言う大坂のプレーは、やや安定感を欠いた。3ゲーム目でブレークするも、直後のゲームでブレークされる。大坂らしい火を吹くフォアのウイナーが飛び出す一方で、早いミスで流れに乗り切れない場面も続いた。
それでも、手にしたブレークのチャンスは、全て生かし切るあたりはさすが。第1セットは終盤にかけ、相手のミスにも助けられ6-3で奪取。
第2セットは、早々にブレークするも追いつかれ、さらにブレーク数で先行されて追う展開に。自分に苛立ち、ラケットを投げる場面もあった。
それでも追い込まれるほどに、サービスもリターンも明らかに攻撃性が増す。このセットも終盤に3ゲーム連取で追い抜いて、終わってみれば6-3、6-4の快勝と言えるスコアで試合を締めた。
試合後の大坂は、今日の試合における“棘”――すなわち「良くなかった点」として、精神面を挙げた
「もっと良い姿勢で試合を戦うべきだった。今日はとてもストレスを感じていた。初戦だし、この大会は私にとって本当に大切だから、勝ちたいと思いすぎてしまった。本来なら結果ではなく、もっとプロセスについて考えるべきだったけれど...、何はともあれ、勝てたことは良かった」
神妙な面持ちで振り返る彼女は、“バラの花”――つまり「良かった」ことに話題が及ぶと、パッと顔をほころばせて言った。
「今日の試合で、もっとも楽しかったパートは、これね!」
そう言い会見室のデスクの下から、小さな赤いぬいぐるみを取り出す。
「今日一番良かったことは、この小さな“ラブブ”ちゃん。“ビリー・ジーン・ブリング”が受け入れられるか不安だったけれど、この子がみんなを笑顔にしてくれたので良かった」
大坂が手にした“ラブブ”とは、香港のデザイナーが制作したマスコットキャラクター。世界中で人気を博し、ナイキともコラボレーションしている。大坂はそのラブブを、テニス界のレジェンド、ビリー・ジーン・キング氏にかけて、ビリー・ジーン・ブリングと命名。大坂のバッグにぶら下がり、全米オープンデビューを果たした。
真紅のウェアに身を包むビリー・ジーン・ブリングが、最も笑顔にした相手は、他ならぬ大坂だろう。愛らしいこの“花”が、棘を覆い包めるか? 問われるのは、ここからだ。
現地取材・文●内田暁
【動画】勝利後のオンコートインタビューで“ラブブ”の名前を紹介する大坂なおみ
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