女子テニスのマルタ・コスチュク(ウクライナ/現世界ランキング15位)にとって、2026年の「全仏オープン」(5月24日~6月7日/フランス・パリ/クレーコート/四大大会)初戦は、精神的に極めて難しい一戦となった。ローランギャロス(全仏)のコートへ向かうその数時間前、彼女は故郷の首都キーウで起きたロシア軍によるミサイル攻撃が、両親の家からわずか100メートルほどの場所に着弾したという知らせを受け取っていたからだ。
当時、家には母親や姉妹、親族がいた。「もし着弾地点があと100メートル違っていたら」――。そんな恐怖と動揺を抱えたまま、コスチュクはオクサナ・セレフメテワ(スペイン/同88位)との1回戦に臨んだ。
試合はコスチュクが6-2、6-3で快勝。終始安定感のあるパフォーマンスを見せ、1時間18分でストレート勝利を収めた。しかしプレー以上に注目を集めたのは、試合後に明かされた彼女の胸中だった。
オンコートインタビューで涙を流したコスチュクは、その後の記者会見で今回の爆撃について「これまでで最も実家に近い攻撃だった」と説明。紛争が始まって以降、危険と隣り合わせの日々は続いてきたものの、「今日はワースト3に入るほどつらい日だった」と率直に現在の心境を明かした。
試合中も、ふと気持ちが現実へ引き戻される瞬間があったという。この日は朝から「家族を失っていたかもしれない」という考えに支配され、気分が悪くなってしまうほどだったと語っている。
一方で、午前11時という早めの時間帯に試合が行なわれたことは、コスチュクにとって“ある種の救い”となった。知らせを受けてから長時間考え込む余裕もなく、半ば気持ちを整理しきれないままコートへ向かわざるを得なかったからだ。そうした状況下での快勝劇は、彼女の並外れた精神力を物語っている。
幸い家族は無事で、コスチュクも安堵感をにじませた。しかし、家族が爆撃の危険に“適応”せざるを得ない状況に変わりはない。トップ選手として結果を求められる一方で、そうした不安や恐怖を抱えながらプレーを続けなければならない現実は、あまりに過酷なものである。
それでもコスチュク自身は今季のクレーコートシーズンで確かな充実ぶりを見せている。前哨戦の「マドリード・オープン」(スペイン)では四大大会に次ぐグレードのWTA1000で初優勝。今回の勝利で同サーフェスでの連勝記録を12に伸ばした。だが、どれだけ結果を残そうとも、彼女の心の中心には常にウクライナがある。
文●中村光佑
【動画】コスチュクが家族への不安を抱えながら全仏OP初戦を突破!
【画像】コスチュクはじめ、「全仏オープン 2026」を戦う女子トップ選手たちの厳選フォト
【関連記事】「継続性」が導いたWTA1000初優勝!世界23位コスチュクがマドリードを制し2週連続V「自分自身とチームを誇りに思う」<SMASH>
当時、家には母親や姉妹、親族がいた。「もし着弾地点があと100メートル違っていたら」――。そんな恐怖と動揺を抱えたまま、コスチュクはオクサナ・セレフメテワ(スペイン/同88位)との1回戦に臨んだ。
試合はコスチュクが6-2、6-3で快勝。終始安定感のあるパフォーマンスを見せ、1時間18分でストレート勝利を収めた。しかしプレー以上に注目を集めたのは、試合後に明かされた彼女の胸中だった。
オンコートインタビューで涙を流したコスチュクは、その後の記者会見で今回の爆撃について「これまでで最も実家に近い攻撃だった」と説明。紛争が始まって以降、危険と隣り合わせの日々は続いてきたものの、「今日はワースト3に入るほどつらい日だった」と率直に現在の心境を明かした。
試合中も、ふと気持ちが現実へ引き戻される瞬間があったという。この日は朝から「家族を失っていたかもしれない」という考えに支配され、気分が悪くなってしまうほどだったと語っている。
一方で、午前11時という早めの時間帯に試合が行なわれたことは、コスチュクにとって“ある種の救い”となった。知らせを受けてから長時間考え込む余裕もなく、半ば気持ちを整理しきれないままコートへ向かわざるを得なかったからだ。そうした状況下での快勝劇は、彼女の並外れた精神力を物語っている。
幸い家族は無事で、コスチュクも安堵感をにじませた。しかし、家族が爆撃の危険に“適応”せざるを得ない状況に変わりはない。トップ選手として結果を求められる一方で、そうした不安や恐怖を抱えながらプレーを続けなければならない現実は、あまりに過酷なものである。
それでもコスチュク自身は今季のクレーコートシーズンで確かな充実ぶりを見せている。前哨戦の「マドリード・オープン」(スペイン)では四大大会に次ぐグレードのWTA1000で初優勝。今回の勝利で同サーフェスでの連勝記録を12に伸ばした。だが、どれだけ結果を残そうとも、彼女の心の中心には常にウクライナがある。
文●中村光佑
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