今季最後のテニス四大大会「全米オープン」の予選が、8月24日に開幕。日本勢では、男子の坂本怜、女子の本玉真唯、坂詰姫野が初日に登場し、いずれも勝利を手にした。本戦に進むためには、3試合勝つ必要がある。
春先に金色に近かった明るい髪色が、真っ黒に戻っていた。
「全然、勝てなかったんですよ、金髪の時に! それに鏡を見た時に、なにか自分じゃないっていう違和感があって。なので、数週間で戻しちゃいました」
丸い目をクリクリとさせ、坂詰姫野が明かす。全米オープン予選1回戦で、ジャスミン・オルテンシ(アルゼンチン)に6-3、6-1で快勝した後のことだ。
「なにか自分じゃないという違和感」は、春以降の坂詰が常に対峙してきた感覚かもしれない。今季は1月の全豪オープンで、予選を突破し初めてグランドスラムの本戦に勝ち進んだ。
その後もWTAツアーに戦いの舞台を上げ、フィリピン・オープンでは地元のスーパースター、アレクサンドラ・イーラと完全アウェーの中で戦った。3月にはBNPパリバ・オープンでも予選を突破し本戦に。本戦2回戦ではセンターコートで、世界1位のアリーナ・サバレンカに立ち向かった。
158センチの小柄な身体で、飛び跳ねビッグネームに挑む姿は、見る者の印象にも残りやすかったのだろう。北米では大会会場を歩いていると、ファンに声を掛けられることも増えていった。
ただ春先に立て続けに出た日本のITF大会では、早期敗退が続いた。
「勝ちたい気持ちが強すぎた」と、坂詰は当時を振り返る。チャレンジャーとして上位選手と戦う時にできた伸びやかなテニスが、日本では鳴りを潜める。
「サバレンカ相手にできた良いプレーのイメージに今の自分が重ならなくて、空回りしていた」
空転し始めた歯車は、ハードコートからクレー、そして芝へとサーフェスが移る中で、よりひずみを増していく。「今日の試合まで、テニスの感覚はずっと良くなかった」と坂詰は言った。
そのような窮状が、良い意味で坂詰を開き直らせたかもしれない。
「やることはシンプルになった。グランドスラムの予選で、やるべきことをやらないなんて、許されない」
それが、今大会に挑む上で抱いた坂詰の覚悟。
コーチの吉田友佳氏は今回の遠征には同行できなかったが、リモートで話し合いは重ねているという。
「友佳さんは、やるべきことをやることに関しては、とても厳しいので」
信頼のこもった声で、坂詰が言う。迷いの吹っ切れた坂詰は、持ち味の足を生かしてコートを駆け、ミスなく効果的にポイントを重ねる。159位の選手相手に、快勝と言える内容だった。
ツアーレベルで試合を重ねたことで「このレベルで戦っていきたい」との思いを強めた今季。フィジカル強化に一層努め、「パワフルなショットに弾かれないように、ラケットも少し重くした」という。
高みに視線を向けつつ、足は再び地につけて、大舞台への道を歩んでいく。
現地取材・文●内田暁
【動画】坂詰姫野がオルテンシに快勝した「全米オープン」予選1回戦ハイライト
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春先に金色に近かった明るい髪色が、真っ黒に戻っていた。
「全然、勝てなかったんですよ、金髪の時に! それに鏡を見た時に、なにか自分じゃないっていう違和感があって。なので、数週間で戻しちゃいました」
丸い目をクリクリとさせ、坂詰姫野が明かす。全米オープン予選1回戦で、ジャスミン・オルテンシ(アルゼンチン)に6-3、6-1で快勝した後のことだ。
「なにか自分じゃないという違和感」は、春以降の坂詰が常に対峙してきた感覚かもしれない。今季は1月の全豪オープンで、予選を突破し初めてグランドスラムの本戦に勝ち進んだ。
その後もWTAツアーに戦いの舞台を上げ、フィリピン・オープンでは地元のスーパースター、アレクサンドラ・イーラと完全アウェーの中で戦った。3月にはBNPパリバ・オープンでも予選を突破し本戦に。本戦2回戦ではセンターコートで、世界1位のアリーナ・サバレンカに立ち向かった。
158センチの小柄な身体で、飛び跳ねビッグネームに挑む姿は、見る者の印象にも残りやすかったのだろう。北米では大会会場を歩いていると、ファンに声を掛けられることも増えていった。
ただ春先に立て続けに出た日本のITF大会では、早期敗退が続いた。
「勝ちたい気持ちが強すぎた」と、坂詰は当時を振り返る。チャレンジャーとして上位選手と戦う時にできた伸びやかなテニスが、日本では鳴りを潜める。
「サバレンカ相手にできた良いプレーのイメージに今の自分が重ならなくて、空回りしていた」
空転し始めた歯車は、ハードコートからクレー、そして芝へとサーフェスが移る中で、よりひずみを増していく。「今日の試合まで、テニスの感覚はずっと良くなかった」と坂詰は言った。
そのような窮状が、良い意味で坂詰を開き直らせたかもしれない。
「やることはシンプルになった。グランドスラムの予選で、やるべきことをやらないなんて、許されない」
それが、今大会に挑む上で抱いた坂詰の覚悟。
コーチの吉田友佳氏は今回の遠征には同行できなかったが、リモートで話し合いは重ねているという。
「友佳さんは、やるべきことをやることに関しては、とても厳しいので」
信頼のこもった声で、坂詰が言う。迷いの吹っ切れた坂詰は、持ち味の足を生かしてコートを駆け、ミスなく効果的にポイントを重ねる。159位の選手相手に、快勝と言える内容だった。
ツアーレベルで試合を重ねたことで「このレベルで戦っていきたい」との思いを強めた今季。フィジカル強化に一層努め、「パワフルなショットに弾かれないように、ラケットも少し重くした」という。
高みに視線を向けつつ、足は再び地につけて、大舞台への道を歩んでいく。
現地取材・文●内田暁
【動画】坂詰姫野がオルテンシに快勝した「全米オープン」予選1回戦ハイライト
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