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海外テニス

【プロの観戦眼50】2強にも匹敵するズベレフの高い技術と、それとは裏腹の気の弱さ…。試合でこうなったら危険信号~佐藤博康<SMASH>

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2026.09.05

ラケットを寝かせた状態でテイクバックする(2~4コマ目)ズベレフのフォアハンド。こうすると最後に手首の切り返しを使えるので(5~6)、ヘッドを瞬間的に加速できる。右下は佐藤博康氏。写真:真野博正、本誌写真部

ラケットを寝かせた状態でテイクバックする(2~4コマ目)ズベレフのフォアハンド。こうすると最後に手首の切り返しを使えるので(5~6)、ヘッドを瞬間的に加速できる。右下は佐藤博康氏。写真:真野博正、本誌写真部

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがスゴイ!」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。第50回は日本屈指のサーブ&ボレーヤーとして44歳まで現役で活躍した佐藤博康氏に話を聞いた。

 先の全仏オープンで悲願の四大大会初Vを遂げたアレクサンダー・ズベレフ。佐藤氏の推しはそのズベレフだが、そこにはある縁が存在する。実は佐藤氏はかつてズベレフの兄ミーシャとダブルスを組んでいたのだ。

 ちょうど20年前に2人は福岡の下部大会で優勝。その時、ミーシャから「自分より弟の方がずっと才能があるんだ」とよく聞かされたという。

 当時アレクサンダーは10歳そこそこでもちろん無名。佐藤氏はそれ以来、どれほどの天才なのかと興味を持っていたが、やがて頭角を現した弟のプレーを見て「本当にスゴくて度肝を抜かれた」そうだ。

 サービスもフォアも桁違いの攻撃力を持ち、バックも強い。特にフォアのフォームは当時としては斬新だった。

「ラケットを寝かせて引くので、最後に手首を切り返して加速できる。普通に立てて引いて回すより、ヘッドがしなって出てくるから力が伝わるんです。今でこそ寝かす選手は多いですが、当時はフェデラーにせよナダルにせよ立てて引くのが主流でした」
 
 現代ではシナーやアルカラスも寝かせるタイプだが、その「先駆者」はズベレフだと佐藤氏。技術面ではズベレフは2強にも引けを取らないと高く評価する。

 一方で「あれだけ武器があるのに大事な場面で取り切れないメンタル...そこは人間なんですね」と歯がゆさもある。2強が精神的に揺るがないのに対し、ズベレフはメンタルの弱さがプレーに出やすい。ただ「そういう普通の人間っぽいところに親しみを感じるし、糖尿病を抱えて頑張っている姿も応援したくなる」と、彼を推す理由になっているのだ。

 ちなみに、試合でズベレフが気弱になっているのは、ラリーのコース取りでわかるそうだ。「まずフォアが真ん中に集まってきます。そして、普段バンバン打ち込んでいるバックのダウンザラインが減ってきます」。

 観戦していてその兆候が見えたら危険なサインだ。

◆Alexander Zverev/アレクサンダー・スべレフ(ドイツ)
1997年4月20日生まれ。198cm、90kg、右利き、両手BH。両親と兄ミーシャが元プロ選手。長身からのビッグサービスと強力なストロークを武器に19歳でツアー初優勝、21年東京五輪金メダル。今年の全仏で四大大会初Vを飾る。ATP最高2位。ツアー通算25勝。4歳から糖尿病を患い、自ら財団を設立して患者を支援している。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
※『スマッシュ』2026年9月号を再編集

【連続写真】ラケットを寝かせて引くズベレフのフォアハンド「30コマの超分解写真」

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