タオルに顔をうずめ、錦織圭が泣きじゃくっていた。現役最後の試合を終え、汗にぬれたシャツを脱ぎ、ベンチに座っていたときのこと。
「ベンチで座ってる時に、この20年、30年かけて積み上げてきた財産が...銀行に大量にお金が入ってたのに、急に無くなってゼロになったような喪失感が、ぶわーって襲ってきて」
父親が海外土産に買ってきてくれた、ジュニア用のテニスラケットを手にボールを打ち始めた日から、約30年。世界で一番高い場所を目指し、毎日積み上げてきたものを失う寂寥感やある種の不安を、彼はいかにも彼らしい比喩で言い表す。
「プラス、ちょっと今日の内容じゃ終われないなっていうのが大きいですかね」
自虐的な笑みを浮かべて、彼はそう言葉を足した。
キャリア最後の公式戦となる「木下グループジャパンオープン2026」を、錦織は「ボーナス」と捉えていると言っていた。先の全米オープン予選で坂本怜に敗れた時には、「最後のろうそくの火が消えた」と寂しそうにこぼしている。ただ大会が近づけば、自然と情熱は戻ってきたという。
「楽しみたい」
ジャパンオープン開幕に向け、公開練習やファンイベントで見せる明るい表情には、これが最後という悲壮感はなかった。
「全く泣くとも思ってなかった。全米オープンでも試合が終わった後、結構晴れやかな気持ちだったし」
試合後に、錦織が振り返る。
ただ多少なりとも、予兆はあった。
「今朝、センターコートで練習していた時に、ドリカムの曲が流れてて。それで、一滴くらい(涙が)垂れそうになって」
世界8位、先の全米オープン・ベスト4のフランシス・ティアフォー(アメリカ/世界ランキング8位)との対戦は、数時間後に迫っていた。
台風が関東に最接近する予報に反し、有明テニスの森上空は、抜けるような青空だった。平日の日中にも関わらず、1万人収容のコロシアムはほぼ満席。MCの呼び込みを受けコートに歩み入る錦織の相貌は精悍で、程よい緊張感を帯びている。対するティアフォーの方が、表情に硬さが見えるようだ。錦織の青と、ティアフォーの赤のウェアが、美しいコントラストを描いていた。
「ベンチで座ってる時に、この20年、30年かけて積み上げてきた財産が...銀行に大量にお金が入ってたのに、急に無くなってゼロになったような喪失感が、ぶわーって襲ってきて」
父親が海外土産に買ってきてくれた、ジュニア用のテニスラケットを手にボールを打ち始めた日から、約30年。世界で一番高い場所を目指し、毎日積み上げてきたものを失う寂寥感やある種の不安を、彼はいかにも彼らしい比喩で言い表す。
「プラス、ちょっと今日の内容じゃ終われないなっていうのが大きいですかね」
自虐的な笑みを浮かべて、彼はそう言葉を足した。
キャリア最後の公式戦となる「木下グループジャパンオープン2026」を、錦織は「ボーナス」と捉えていると言っていた。先の全米オープン予選で坂本怜に敗れた時には、「最後のろうそくの火が消えた」と寂しそうにこぼしている。ただ大会が近づけば、自然と情熱は戻ってきたという。
「楽しみたい」
ジャパンオープン開幕に向け、公開練習やファンイベントで見せる明るい表情には、これが最後という悲壮感はなかった。
「全く泣くとも思ってなかった。全米オープンでも試合が終わった後、結構晴れやかな気持ちだったし」
試合後に、錦織が振り返る。
ただ多少なりとも、予兆はあった。
「今朝、センターコートで練習していた時に、ドリカムの曲が流れてて。それで、一滴くらい(涙が)垂れそうになって」
世界8位、先の全米オープン・ベスト4のフランシス・ティアフォー(アメリカ/世界ランキング8位)との対戦は、数時間後に迫っていた。
台風が関東に最接近する予報に反し、有明テニスの森上空は、抜けるような青空だった。平日の日中にも関わらず、1万人収容のコロシアムはほぼ満席。MCの呼び込みを受けコートに歩み入る錦織の相貌は精悍で、程よい緊張感を帯びている。対するティアフォーの方が、表情に硬さが見えるようだ。錦織の青と、ティアフォーの赤のウェアが、美しいコントラストを描いていた。




