2回戦でこのカードを見られたファンは、とてつもなく幸運だったろう。あるいは、早い段階でこの二人が当たってしまうことは、大会全体としてみれば「もったいない」とも言えるかもしれない。
「木下グループ ジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2026」2回戦で、世界ランキング8位のフランシス・ティアフォーと、世界9位のアルトゥール・フィスが対決。このカードは、8月のATPマスターズ1000、シンシナティ大会決勝の再現でもある。
本来なら、いずれも上位シードになるはずのティアフォーとフィスが2回戦で対戦したのは、いくつかの想定外が重なったためだった。2024年のジャパンオープンで、当時20歳のフィスはキャリア3つ目のタイトルを獲得。ランキングを20位まで上げ、翌年の全仏オープンを迎えた時点でのランキングは14位。若きフランス人は、地元でのトップ10入りも目前だった。
だが2回戦でフルセットの熱戦を勝ち切るも、3回戦はケガのため棄権。理由は、腰椎分離症。その後は長期離脱を余儀なくされ、今年2月が復帰戦だった。
復帰時のランキングは42位。当初は、身体の状態と相談しながらのシーズンを想定していただろう。ところが復帰3大会目のドーハ大会で準優勝。5月のバルセロナでは優勝。そうして前述したように、夏にはシンシナティでマスターズ初戴冠。大会後に、キャリア最高位の11位まで、ランキングを急上昇させた。
この頃までフィスは、全米オープンから間もない今の時期は、大会に出る予定はなかったという。「身体を休ませる必要があると思っていた」というのが、当時の思いだった。だがランキングは上昇し、腰の状態も良かったのだろう。年間上位8選手が出場できるATPツアーファイナルズへのレースでも、現在7位につけている。そこで急きょジャパンオープン出場を決意するも、「エントリーの締め切りから数時間経っていた」。唯一の出場方法は、予選から出ること。そこで今大会のフィスは予選2試合を勝ち抜き、ティアフォーの待つ本戦2回戦まで勝ち進んできた。
予選は苦戦続きで、「まだシャープではない」と自分のプレーに満足していなかったフィス。ただ試合を重ねるたびに、動きもショットも鋭利さを増していった。
「この大会は、約1カ月ぶりの試合。最初はアップダウンも激しかった」と振り返る。8月末の全米オープンでは、1回戦でステファノス・チチパスに敗退。試合後は落胆の色を濃くしていた。
全米後、フィスは「一週間ほどのオフを取り、小旅行にも行った」という。その後は「とても厳しい練習ブロックを設け、身体を限界まで追い込んだ」とも言った。再び集中力と闘志を高め、万全の準備で挑んだ今大会。その心身の充実度は、「良き友人」でもあるティアフォーとの対戦を迎え、さらに一段階引き上げられた。サービス、フットワーク、そしてストロークの全てが、高次で噛み合い加速する。特に、ベースライン後方での守備から一瞬で攻撃に切り替えるスピードが、ティアフォーのリズムを崩していた。最終スコアは、6-3, 7-5。観客から幾度も感嘆の声を誘う、エンターテイメント性にも満ちた好ゲームだった。
予選から既に4試合。ただ見せるのは疲れではなく、高まる集中力と上位への意欲。
「ここでのプレーを楽しんでいる。もっと勝ち進み、もっと僕への応援が増えていくといいな」
スタジアムとの一体感も楽しみながら、一歩ずつ歩みを進める。
取材・文●内田暁
【画像】フィスがティアフォーを破り準々決勝進出!
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「木下グループ ジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2026」2回戦で、世界ランキング8位のフランシス・ティアフォーと、世界9位のアルトゥール・フィスが対決。このカードは、8月のATPマスターズ1000、シンシナティ大会決勝の再現でもある。
本来なら、いずれも上位シードになるはずのティアフォーとフィスが2回戦で対戦したのは、いくつかの想定外が重なったためだった。2024年のジャパンオープンで、当時20歳のフィスはキャリア3つ目のタイトルを獲得。ランキングを20位まで上げ、翌年の全仏オープンを迎えた時点でのランキングは14位。若きフランス人は、地元でのトップ10入りも目前だった。
だが2回戦でフルセットの熱戦を勝ち切るも、3回戦はケガのため棄権。理由は、腰椎分離症。その後は長期離脱を余儀なくされ、今年2月が復帰戦だった。
復帰時のランキングは42位。当初は、身体の状態と相談しながらのシーズンを想定していただろう。ところが復帰3大会目のドーハ大会で準優勝。5月のバルセロナでは優勝。そうして前述したように、夏にはシンシナティでマスターズ初戴冠。大会後に、キャリア最高位の11位まで、ランキングを急上昇させた。
この頃までフィスは、全米オープンから間もない今の時期は、大会に出る予定はなかったという。「身体を休ませる必要があると思っていた」というのが、当時の思いだった。だがランキングは上昇し、腰の状態も良かったのだろう。年間上位8選手が出場できるATPツアーファイナルズへのレースでも、現在7位につけている。そこで急きょジャパンオープン出場を決意するも、「エントリーの締め切りから数時間経っていた」。唯一の出場方法は、予選から出ること。そこで今大会のフィスは予選2試合を勝ち抜き、ティアフォーの待つ本戦2回戦まで勝ち進んできた。
予選は苦戦続きで、「まだシャープではない」と自分のプレーに満足していなかったフィス。ただ試合を重ねるたびに、動きもショットも鋭利さを増していった。
「この大会は、約1カ月ぶりの試合。最初はアップダウンも激しかった」と振り返る。8月末の全米オープンでは、1回戦でステファノス・チチパスに敗退。試合後は落胆の色を濃くしていた。
全米後、フィスは「一週間ほどのオフを取り、小旅行にも行った」という。その後は「とても厳しい練習ブロックを設け、身体を限界まで追い込んだ」とも言った。再び集中力と闘志を高め、万全の準備で挑んだ今大会。その心身の充実度は、「良き友人」でもあるティアフォーとの対戦を迎え、さらに一段階引き上げられた。サービス、フットワーク、そしてストロークの全てが、高次で噛み合い加速する。特に、ベースライン後方での守備から一瞬で攻撃に切り替えるスピードが、ティアフォーのリズムを崩していた。最終スコアは、6-3, 7-5。観客から幾度も感嘆の声を誘う、エンターテイメント性にも満ちた好ゲームだった。
予選から既に4試合。ただ見せるのは疲れではなく、高まる集中力と上位への意欲。
「ここでのプレーを楽しんでいる。もっと勝ち進み、もっと僕への応援が増えていくといいな」
スタジアムとの一体感も楽しみながら、一歩ずつ歩みを進める。
取材・文●内田暁
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