海外テニス

絶頂期に暴漢に刺された悲運の女王、セレス。フォア&バック双方から攻撃できる両手打ちで世界を席巻【レジェンドFILE15】

スマッシュ編集部

2020.04.22

女子でフォア、バックどちらからでも攻撃できるスタイルを確立した選手がセレスだった。写真:スマッシュ写真部

 ステフィ・グラフを女王の座から引きずり下ろした最初の選手、それがモニカ・セレスだ。1990年には16歳6カ月で全仏オープンを制し、グランドスラムにおける女子の最年少優勝記録(当時)を達成。翌91年には長期政権を敷いていたグラフに取って代わって、ランキング1位に上り詰めた。

 しかし、絶頂期を迎えていた93年、試合中に暴漢から背中を刺されるという信じがたい災厄に見舞われ、ツアーを約2年半にわたって欠場。もし、この事件がなければ、女子テニス史においてもっと偉大な記録を残したことは間違いない。
 
 セレスの武器は、フォア、バックとも両手打ちから繰り出す桁外れの強打だった。両手だとリーチは短くなるが、彼女には俊敏なフットワークがあり、打ち出すボールにはそれを補って余りある威力もあった。

 プレースタイルは「相手に振られる前に先手を取って決める」という作戦が中心。両サイドから攻撃できるので、グラフの十八番であるフォアの逆クロスも苦にせず、むしろ逆に叩き返してしまう。

 さらにセレスは、この連続写真のようにヒジを畳みながらライジングで高い打点から叩くことも得意だった。スピードだけでなくテンポの早さも加わって、攻撃テニスの牙城を築いていったのだ。その点からいえば、現代のスピードテニスを先取りしていた選手ということになる。

【プロフィール】モニカ・セレス/Monica Seles(USA)
1973年生まれ。WTAランキング最高位1位(91年3月)。グランドスラム通算9勝(AUS:91~93・96年、RG:90~92年、US:91・92年)。左利きでフォア、バックとも両手打ち。フラットでパワーのあるグラウンドストロークを得意とした。15歳でプロに転向し、90年全仏では16歳6カ月の若さでGS初優勝。91年にグラフからNo.1を奪取するが、93年に観客から背中を刺されてキャリアを中断させられる。その後復活を果たし、96年全豪で奇跡の優勝を飾った。2003年までプレーを続け、ツアー通算53勝(歴代10位)をマーク。

編集協力●井山夏生 構成●スマッシュ編集部

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