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海外テニス

ビヨン・ボルグからボリス・ベッカーへ「新B・B伝説の誕生」/1985年男子決勝【ウインブルドン名勝負】

スマッシュ編集部

2020.07.01

「ノーシードは勝てない」の伝統は17歳の少年によって打ち破られた。あらゆる記録を塗り替えてベッカー時代がここに開幕した。(C)GettyImages

「ノーシードは勝てない」の伝統は17歳の少年によって打ち破られた。あらゆる記録を塗り替えてベッカー時代がここに開幕した。(C)GettyImages

 新型コロナウィルス感染拡大により、残念ながら中止となったウインブルドン。そこで本来大会が開催されるはずだった期間に合わせ、過去のウインブルドン名勝負をピックアップしていく。2回目は1985年の男子決勝、大会史上最年少チャンピオンが生まれたボリス・ベッカー対ケビン・カレンだ。

   ◆   ◆   ◆

 少年は風のように現れた。

 2週間前に前哨戦のクィーンズクラブ・グラスコート選手権で優勝したのが、初のグランプリ・タイトル。にもかかわらず、少年の放つ何かが、目の肥えたウインブルドンのテニス通たちを呪縛した。集団催眠にも似た、それでいて確かな予感。「優勝はベッカーだ」――そんな戯言めいた評判が、大会前からテニスのメッカに飛び交っていた。

 賭け屋の人気で、ボリス・ベッカーはジョン・マッケンロー、イワン・レンドル、マッツ・ビランデルに次ぐ得票数。弱冠17歳、しかもノーシードの少年が、2度の優勝を誇るジミー・コナーズと並んで堂々の第4位だ。これに驚かない人間がいるはずはない。ただ1人、当のベッカーを除いては…。

「4位だって? マッケンローやレンドルに比べると、まだ無名人だから気楽なものさ。でも、無名人のまま終わるつもりはないよ」

 小僧らしいほどの、恐いもの知らず。昨年、3回戦で足首を痛め、車イスで退場した苦い経験がありながら、平然とそんなことを言ってのける。十数日後に世界中を巻き込むことになる烈風は、緒戦を終了した時点で早くもその兆しを見せ始めていた。

 風が走った。3回戦でヨアキム・ニーストロム、続いてティム・マイヨットと、シード選手にいずれもフルセットで競り勝ち、『初代B・B』ビヨン・ボルグと肩を並べる最年少の8強入り。さらには、レンドルを倒して勢いに乗るアンリ・ルコントを葬り、スウェーデン最後の砦アンデシュ・ヤ―リードをも突き崩す。
 
 瞬く間の決勝進出。もちろん、大会史上最年少だ。

 しかし、ノーシードからの優勝は皆無という、ウインブルドンならではの堅固なジンクスが待ち受ける。過去8人が挑み、ついに及ばなかった厚い壁…。

「でも、僕は突破できると思うよ。かえってやり甲斐があるというものさ」

 どこまでも強気な少年は、涼し気な笑顔で壁面へと歩を進めた。

 マッケンロー、コナーズを打ち砕いたカレンの弾丸サーブに臆することなく、ベッカーは真っ向から勝負を挑む。ラケットを何度弾き飛ばされようと『ブンブン・ベッカー』の異名どおり、フルスイングあるのみだ。

 スーパーリターンが、サービスダッシュするカレンの足元を鋭くえぐる。あまりの風圧(プレッシャー)に、フットフォールトとダブルフォールトを繰り返すカレン。6-3、6-7、7-6、6-4。サービスエースの数でも、ベッカーは20本と、カレンを1本上回っていた。

 ノーシード、大会史上最年少(17歳7カ月)、そしてドイツ人初の優勝。ウインブルドンを襲った記録破りの強風は、最後にひときわトーンを高めた。「これで西ドイツのテニスは変わるだろうね。我々はこれまでアイドルがいなかったけど、今は1人持てたわけだから」

◆1985年男子決勝
B・ベッカー [6-3 6-7(4) 7-6(3) 6-4] K・カレン

構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ1985年9月号を再編集

【写真】ベッカー、ボルグ、コナーズ、エドバーグ…伝説の王者たちの希少な分解写真
 

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