国内テニス

王者ジョコビッチとの戦いの中で、添田豪は世界1位の熱量と、「1ポイントを勝負する」楽しさを再確認した

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2019.10.03

添田豪(左)とジョコビッチ(右)。握手の際、長く話していた内容とは?写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

【楽天ジャパンオープンテニスチャンピオンシップ2019】
本戦2回戦/10月2日(水)
N・ジョコビッチ(1) 6-3 7-5 添田豪[WC]


 大会パンフレットの選手紹介に添田豪の名前はない。当の本人が「昨年から今年の前半まではこの舞台に立てると想像できなかった」と言うとおり、826日までは日本で7番手の選手だった。それが今は3番手にまでランキングを上昇させ、楽天オープン2回戦で、世界1位のジョコビッチとネットを挟んで同じコートに立っている。

 世界1位とプレーする機会は、誰にでも巡ってくるものではない。「試合前から緊張していた」という添田は、3ゲーム目、デュースが5回もあり、ジョコビッチに走らされてブレークを許す。この時点で「かなり足にきている」ほどだったと言う。

 しかし、添田のプレー自体は
、サービスの確率も良く、広角に打つショットも決まり、善戦しているようにも見えた。そんな中、次第にジョコビッチのショットの精度とスピードが上がると、
3-6で第1セットを失う。

「僕は上り坂を走っていて、彼は平たんな道を走っている感じ」と添田が表現した言葉が、コートに立っている者が実際に肌で感じている温度差だったのかも知れない。

 しかし、添田は少しずつ自らの温度を世界1位へと近づけていった。


 第2セットから緊張も和らぎ、「1ポイント1ポイントを勝負する」楽しさを思い出し、それのみに集中していく。この1ポイントに勝負を賭け、取れた時の快感こそ、35歳の添田が今季中盤にランキングを上昇させることができた要因であり、今も成長できている理由である。
「攻め続けるだけでなく守ったり、守った中に急に攻めたり、一定ではないリズムを試そう」と思っていたプレーが、第2セットからは実行することができた。だからこそ、3-5ジョコビッチのサービング・フォー・ザ・マッチになった時も、焦らず、淡々としたプレーを見せ、ブレークバックして5-5まで持ち込むことができた。

 その後の2ゲームは王者が冷静にプレーして添田は敗れたが、彼の終盤のプレーに苦しんだからこそ、ジョコビッチは試合中に叫びもしたし、勝利の瞬間も激しいガッツポーズも見せたのだろう。

「以前は(キャリアの)終盤だと思っていたけれど、今はまだ伸びしろがあると思うし、このレベルでトップ100に入ってやれる手ごたえを感じています」と添田は言う。
 今年の楽天オープンは、35歳の添田に、世界1位の熱量と、進んでいる道が間違っていないことを再確認せてくれた大会となった。

 ところで、試合後の握手の際に、2人は長く話していた。その内容は、添田の結婚式の際に、ほぼ面識のなかったジョコビッチが、ビデオメッセージを送ってくれたことに、添田が感謝の気持ちを伝えていたそうだ。


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■10月3日の主な試合予定
〇コロシアム(11時開始)
第1試合 J・トンプソン vs ダニエル太郎[WC]
第2試合 L・ハリス vs J・ミルマン
第3試合 D・ゴファン(3) vs D・シャポバロフ
第4試合 チョン・ヒョン vs M・チリッチ
第5試合 D・イングロット/A・クライチェク vs M・パビッチ/B・ソアレス
 
〇楽天カードアリーナ(第1試合は1430分開始)
第1試合 R・ラム/J・ソールズベリー(3) vs L・プイユ/J-L・ストルフ
第2試合 N・メキッチ/F・スクゴール vs R・ボパンナ/D・シャポバロフ
[WC]=ワイルドカード(主催者推薦枠)、[Q]=予選上がり、カッコはシード

■大会情報■
楽天ジャパンオープン
9月30日~10月6日(本戦)
会場・有明コロシアム及び有明テニスの森公園
 
取材・文● 赤松恵珠子(スマッシュ編集部)