国内テニス

【伊達公子】コロナ禍でプロが対応に苦しむのは?全仏OP開催の1週間遅れは調整がキツイ<SMASH>

伊達公子

2021.04.30

スケジュールが1週間伸びるとピーキングが難しいという伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 全仏オープンテニスの開催が1週間遅れたり、隔離が必要になっている状況で、ツアーを回っているプロにとって大変なのは、ピーキングでしょう。

 選手はグランドスラムに向けてピーキングを合わせていきます。大会から逆算していつまで追い込めるかを考え、それからペースダウンして大会に入っていきます。このピーキングに合わせて、どの前哨戦に出るかを考えていくのです。

 そのため、スケジュールが変更になると、テニスの部分とメンタルの部分の上げ下げが激しくなってしまいます。1週間伸びたら、上げ過ぎないように維持するなど、調整するのが難しくなるわけです。

 全仏オープンの開催が1週間遅れたことで、ウインブルドンまでの期間が2週間になりました。これも大変な点です。特に全仏オープンで2週目に残る選手にとっては。短期間で芝にアジャストして、身体を回復させ、気持ちを上げていかなくてはいけません。

 芝が得意な選手は、クレーコーターの人たちよりは比較的ストレスは少ないですよね。ただ、それが結果にうまく結びつくかといえば、それはまた難しいところ。意外と割り切れた方が、精神的に良かったりすることもあります(笑)。
 
≪やれることをコツコツとやり続ける≫

 隔離生活は受け入れるしかないから置かれている環境に慣れるしかないと思いますよ。息抜きができないのは苦しいですが、今の時代は比較的みんな部屋で過ごすことにも慣れていると思います。ネットフリックスを見たりゲームをしたり、1人で過ごす術はあるし、外とつながる方法もありますから。

 ただ、それだけでは煮詰まってしまうので、他の選手と話をするなど、うまく息抜きができる方法を見つけられるといいですね。昔の時代でこんなことが起きたら、本当にすることが何もありません(笑)。

 コロナ禍で選手は本当に大変だと思います。勝っても負けても何かスッキリしないというか、常に模索したり、モヤモヤした中でやり続けないといけない部分が大きいだろうなと想像できます。

 大会もどこまで出られるのかが見えなかったり、出られるうちに出ようと思ってしまうと、いつもとは違う焦りも生まれてきます。こんな状況でもモチベーションをしっかりと持って臨むこと。でもそれで、結果が出ないと落ち込みも大きくなります。

 難しいけれど、やれることをコツコツと積み重ねることしか今はできません。それを腐らずやり続けられる人が残っていくと思います。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

【PHOTO】世界4位にまで上り詰めた伊達公子のキャリアを写真で振り返り!