来月末から開催されるテニスの四大大会「ウインブルドン」(6月27日~7月10日/イギリス・ロンドン/芝/グランドスラム)での「ロシア・ベラルーシ人選手の除外」に対し、ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)は、「公平性を保つための措置」として、出場する選手にランキングポイントを付与しないと正式発表。現時点では昨年大会で獲得したポイントもそのまま失効するとなった。
この決定に不服を唱えたのが現世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)だ。変更がなければ、昨年のウインブルドンで四大大会20度目の優勝を飾ったレジェンドは2000ポイントを失い、ダニール・メドベージェフ(2位)に1位の座を明け渡す見込みなのだ。
現地5月23日に実施された西岡良仁(99位)との全仏オープン初戦を突破したジョコビッチは、試合後の記者会見でウインブルドンでのポイント失効を踏まえ、「個人的には、ウインブルドンでプレーしても2000ポイントを守る機会がないことは、もちろん僕にネガティブな影響を与えている」と率直に複雑な心境を告白した。
また、ランキングポイントの付与停止措置については「選手たちがATPと一緒になって、今回のウインブルドンを含めグランドスラムでミスが起きた場合に、何らかの余波があることを示せたのは良かったと思う」と一定の理解を示しつつ、大会主催側には以下のように不満を口にした。
「英国政府からオールイングランド・テニスクラブへの勧告文書があり、そこには数種類のオプションがあったことを知った。WTAやATPからも、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの男女選手がウインブルドンの期間中に一緒にエキジビションマッチをやるとか、その賞金をウクライナの被災者に寄付するといった提案が来ていると聞いた。
様々なアイデアがあったのに、残念ながらウインブルドンからは確固たる提案はなかった。だから間違っていると思う。ポイントを与えない、ポイントを守れないというものではなく、もっと良い解決策があったはずだ」
それでも35歳のレジェンドは「あの大会をポイントや賞金という枠だけで見ているわけではない。僕にとって、それは別物なんだ」として、ウインブルドン出場には前向きの姿勢を示している。
また24日の全仏1回戦でイリア・イバシュカ(ベラルーシ/50位)に敗れた男子世界78位のブノワ・ペール(フランス)も「賞金のためにウインブルドンには出るよ」と表明。一方でポイントを与えられないことや、その影響には怒りをあらわにした。
「もし全選手に聞いたら今回の決定は理解できないと答えると思う。99%のプレーヤーは、ポイントを与えられたうえで以前と同じように大会でプレーすることを望んでいる。ロシアやロシア人選手には申し訳ないが、問題を起こしているのは彼らなのに、他の選手がその代償を払わなければならない。メドベージェフが1位になるのも馬鹿げている」
すでに女子では大坂なおみ(38位)がウインブルドンの欠場を示唆。だが彼女に限らず、欠場を考えるプレーヤーが続々と出てくる可能性も否定はできない。開幕まで残り1か月、各選手たちがどのような判断を下すのか注目される。
文●中村光佑
【PHOTO】ウインブルドン2021で活躍した男子選手たち
この決定に不服を唱えたのが現世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)だ。変更がなければ、昨年のウインブルドンで四大大会20度目の優勝を飾ったレジェンドは2000ポイントを失い、ダニール・メドベージェフ(2位)に1位の座を明け渡す見込みなのだ。
現地5月23日に実施された西岡良仁(99位)との全仏オープン初戦を突破したジョコビッチは、試合後の記者会見でウインブルドンでのポイント失効を踏まえ、「個人的には、ウインブルドンでプレーしても2000ポイントを守る機会がないことは、もちろん僕にネガティブな影響を与えている」と率直に複雑な心境を告白した。
また、ランキングポイントの付与停止措置については「選手たちがATPと一緒になって、今回のウインブルドンを含めグランドスラムでミスが起きた場合に、何らかの余波があることを示せたのは良かったと思う」と一定の理解を示しつつ、大会主催側には以下のように不満を口にした。
「英国政府からオールイングランド・テニスクラブへの勧告文書があり、そこには数種類のオプションがあったことを知った。WTAやATPからも、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの男女選手がウインブルドンの期間中に一緒にエキジビションマッチをやるとか、その賞金をウクライナの被災者に寄付するといった提案が来ていると聞いた。
様々なアイデアがあったのに、残念ながらウインブルドンからは確固たる提案はなかった。だから間違っていると思う。ポイントを与えない、ポイントを守れないというものではなく、もっと良い解決策があったはずだ」
それでも35歳のレジェンドは「あの大会をポイントや賞金という枠だけで見ているわけではない。僕にとって、それは別物なんだ」として、ウインブルドン出場には前向きの姿勢を示している。
また24日の全仏1回戦でイリア・イバシュカ(ベラルーシ/50位)に敗れた男子世界78位のブノワ・ペール(フランス)も「賞金のためにウインブルドンには出るよ」と表明。一方でポイントを与えられないことや、その影響には怒りをあらわにした。
「もし全選手に聞いたら今回の決定は理解できないと答えると思う。99%のプレーヤーは、ポイントを与えられたうえで以前と同じように大会でプレーすることを望んでいる。ロシアやロシア人選手には申し訳ないが、問題を起こしているのは彼らなのに、他の選手がその代償を払わなければならない。メドベージェフが1位になるのも馬鹿げている」
すでに女子では大坂なおみ(38位)がウインブルドンの欠場を示唆。だが彼女に限らず、欠場を考えるプレーヤーが続々と出てくる可能性も否定はできない。開幕まで残り1か月、各選手たちがどのような判断を下すのか注目される。
文●中村光佑
【PHOTO】ウインブルドン2021で活躍した男子選手たち