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ますます白熱するGOAT論争に元王者ビランデル氏が異議。「男子テニスのベスト3」と定義すべき<SMASH>

中村光佑

2022.07.17

GS22勝でトップを走るナダル(中)に、21勝と迫るジョコビッチ(左)、20勝で続くフェデラー(右)。誰が最も偉大かを決める必要はないとビランデル氏は言う。 (C)Getty Images

 長年にわたって世界のトップをひた走り、それぞれが四大大会で20勝以上を誇る男子テニスの「ビッグ3」、フェデラー、ナダル、ジョコビッチ。もはやテニス界に欠かせない存在である彼らをめぐって、あらゆるテニスファンや識者を賑わせてきたのが、3人の中で誰が史上最高の選手なのかを決める「GOAT(Greatest of All Time)論」だ。

 現段階でのグランドスラム優勝回数はフェデラーが20回、先日の「ウインブルドン」で優勝したジョコビッチが21回、そしてナダルが男子史上最多の22回となっている。だがビッグ3はこれ以外にも数々の輝かしい功績を残しており、GS優勝回数だけでGOAT論に終止符を打つことはできないのが現実だ。四大大会で7度の優勝を誇る元世界王者のマッツ・ビランデル氏(スウェーデン/57歳)もそう考えるうちの1人である。

 このほど欧米スポーツメディア『Eurosport』のインタビューに応じたビランデル氏はGOAT論に決着をつけるための大きな要因として、数年前までは「四大大会での優勝回数がとても重要だと考えていた」という。

 それを踏まえたうえで、フェデラーが右ヒザのケガで1年以上にわたって戦列を離れるとともに、数多くの有能な若手も台頭しているなか、6月の全仏オープンで最多GS優勝を成し遂げたナダルを高く評価した。

「昨年はノバクが3つのグランドスラムを制し、年間GSとGS21勝を達成するチャンスがあったのに、(全米で)メドベージェフに敗れて達成できなかった。その後、ラファが今年1月の全豪オープンを制し、先に21勝を達成した。そして6月に全仏を制して22勝になった。だからナダルに勢いがあるんだと思うよ」
 
 その一方で「ここ2~3年での彼らのキャリアでの強さを考慮する必要がある」として、考え方に変化が生じていることを明かした。新型コロナウイルスのワクチン未接種であるジョコビッチが今年の「全米オープン」(8月29日~9月11日/アメリカ・ニューヨーク/ハードコート/グランドスラム)で欠場が見込まれているためにGOAT論が混沌とする可能性があり、1人だけを"史上最高の選手"に選ぶべきではないと主張するのだ。

「現段階ではノバクのワクチン接種の状況が非常に重要であり、全米でプレーが許されるのかということだ。誰がGOATレースを制するのか、史上最も偉大な選手を決めるのは本当に重要なことなのだろうか?」

「3人ともに3~4年の間、テニス界で圧倒的な強さを誇った時期があった。今、彼らの間ではラファとノバクが一進一退を繰り返しており、我々はそれを見ることができる一部の人間であることをとても光栄に思っている。でも私個人としては、誰が最も多くのGSタイトルを獲得するかは気にしていない。3人の偉大な選手のプレーや競い合う姿を目の当たりにする特権を得ていると思うべきだ。我々は3人を『男子テニスのベスト3』と定義するつもりだ」

 確かにビッグ3はタイトル獲得数だけでは計り知れないカリスマ性を兼ね備えている。だからこそ現在も3人がテニス界で圧倒的な存在感を放ち続けているのだ。

文●中村光佑

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