海外テニス

ロシア女子テニス選手の同性愛宣言を好意的に捉える動き!「同じ境遇にある多くの人が触発される」<SMASH>

中村光佑

2022.08.05

自身が同性愛者であることを宣言したカサキナの行動を支持する声がテニス界で広がっている。(C)Getty Images

 先日ロシア人ブロガー、ヴィティア・クラフチェンコ氏のYouTubeに出演し、自身が同性愛者であると告白し、様々な苦悩を激白した女子テニスのダリア・カサキナ(ロシア/世界ランキング12位)。その彼女が『WTA insider』(女子テニス協会が運営するウェブサイト)のインタビューに応じ、大胆なカミングアウトによって「気分が良くなった」と語った。

 ロシアは反LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の風潮が根強い。2013年に制定された法律でも「同性愛の宣言」を禁じているほどだ。カサキナもこれまでバイセクシュアルであると明かしていたものの、同性愛や私生活について詳しく話してこなかった。

 今年7月に同郷の女子サッカー選手であるナディア・カルポワが同性愛を公表。それに感銘を受けたというカサキナは、クラチェンコ氏のYoutubeで「私には女性の恋人がいる」と公言。その後彼女は自身のインスタグラムを通じて、現在交際中の女子フィギュアスケート選手、ナタリア・ザビアコ(エストニア)と抱き合う1枚の写真をアップした。

 同性愛の告白を好意的に捉えてくれる人について、カサキナ本人も大きな喜びを感じているようだ。

「スポーツ界の多くの人々がサポートしてくれるようになった。また西洋の人々だけではなく、私の母国の人々からも非常に多くの良い反響があった。今私はより自由で幸せだと感じているし、正しい一歩を踏み出したとも思う。自分にとって良いことだけでなく、他の人たちにとっても助けになったと思っている。それは素晴らしいことだし、とても良い気分でいられる」
 
 ただ忘れてはならないのが、カサキナが母国の方針に反する態度を取ってしまった点だ。世界のトップをひた走り、影響力も大きいプレーヤーであるだけに、場合によっては彼女に何らかの危険が及ぶ可能性も否定はできない。そんななか、テニス系海外メディア『UBITENNIS』によると、元世界女王の大坂なおみ(現41位)をはじめとする多くの女子選手がカサキナを守るためのサポートを表明したという。

 これについて現在開催中の女子テニスツアー「シリコンバレー・クラシック」(8月1日~7日/アメリカ・サンノゼ/ハードコート/WTA500)に出場している18歳のココ・ガウフ(アメリカ/11位)は、大会開幕前の記者会見で「テニスでは少なくとも周りの女の子たちはバックグラウンドやアイデンティティに関係なく、みんなとても協力的だと思う」と述べ、自身の信念を貫くカサキナを手放しに称賛した。

「彼女が自分の人生の一部を心置きなく話してくれたことに感謝している。彼女はそんなことをする必要はなかった。でも、彼女と同じような境遇にある多くの人が、彼女のカミングアウトに触発されることは想像に難くない」

 おそらくカサキナも相当な覚悟を持って打ち明けたのは間違いないだろう。内に秘めていた想いを解放した彼女の今後が楽しみだ。

文●中村光佑

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