海外テニス

オーストラリア入国問題でキリオスがジョコビッチを援護射撃「俺はノバクを見たいんだ!」<SMASH>

中村光佑

2022.10.30

最近は急速に仲が良くなっているジョコビッチ(左)とキリオス(右)。豪州入国問題についても2人の息は合っている様子だ。(C)Getty Images

 今年1月に新型コロナウイルスのワクチン接種免除をめぐるオーストラリア入国騒動の末、国外退去と全豪オープン欠場を余儀なくされ、豪州政府から「今後3年間の入国禁止」を通告された男子テニス元世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア/現世界ランク7位)。依然ワクチンを接種していない彼は2023年の同大会出場も不透明な状況が続いている。

 そんな35歳の鉄人が9度の優勝を誇るメルボルンの舞台で無事プレーできることを切望している選手の1人が、歯に衣着せぬ物言いで幾度となくメディアに取り沙汰されている27歳のニック・キリオス(オーストラリア/20位)だ。

 今年7月のウインブルドン決勝で優勝を争った2人はテニスファンの間でも「犬猿の仲」と称されるほど、以前は互いを牽制し合っていたことで知られる。ところが豪入国騒動の渦中にいたジョコビッチをキリオスが擁護したことをきっかけに、ここ最近はSNS上で冗談を交えてやり取りもするほど急速に親交を深めているのだ。

 オーストラリアのニュースメディア『WAtoday』によると、先日シドニーで行なわれたNBA(米プロバスケットボールリーグ)グッズ専門店のオープニングセレモニーに出席したキリオスは、報道陣からジョコビッチの全豪出場の可否について問われ、「俺はノバク(ジョコビッチ)がこのスポーツ(テニス)のためにオーストラリアでプレーできることを望んでいる」と回答。さらにこう続けた。

「我々は、ロジャー(フェデラー)というレジェンドがこのスポーツから去るのを目にしたばかりで、誰もその穴を埋めることはできないだろうね。でもノバクやラファ(ナダル)がまだいる間は、そういうタイプのプレーヤーが必要だと思う。俺たちは世界最高のプレーヤーを見たいと思っている。俺はプレーヤーだから、ノバクを見たいんだ!」
 
「彼の存在は、俺がプレーを続ける理由の1つでもある。子どもの頃は最高のスタジアムで、世界最高の選手とプレーしたいと思うものさ。彼があそこ(全豪)でプレーできることを願っている。今回はオーストラリアが両手を広げて彼を迎えてくれることを祈っているよ」

 実際のところ、ジョコビッチの豪州入国と全豪出場には光明が見え始めている。今年7月初旬には豪州国内の新型コロナ感染拡大防止プロトコルが緩和され、豪連邦政府が全ての渡航者に対するワクチン接種義務を廃止。これにより未接種者であっても特別な許可を得ることなく入国を認められることとなった。

 また以前英紙『Daily Mail』は今年5月に第31代首相に就任したばかりのアンソニー・アルバニージ氏が「大のテニス好き」であり、「ジョコビッチの3年間にわたる入国禁止措置の停止を求めるべく、豪テニス連盟と緊密にコンタクトを取っている」と報じていた。

 だがカレン・アンドリュース内務大臣をはじめ、「たとえ世界的なスーパースターであっても例外を認めるべきではない」と主張する豪政府の重鎮も多いという。果たして最終的にはどのような決定が下されるのか。今後の動向から目が離せない。

文●中村光佑

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