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ワクチン接種義務延長で米国大会出場が困難なジョコビッチ。ディレクターのハース氏は「不名誉なこと」と批判<SMASH>

中村光佑

2023.02.09

インディアンウェルズの大会ディレクターを務めるハース氏(左)は、ジョコビッチ(右)の出場を実現させるため「可能な限りのことを行なっている」と言うが、現状は厳しい。(C)Getty Images

 先月行なわれた年内最初のテニス四大大会「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/ハードコート)で大会10度目の優勝とグランドスラム最多タイとなる22度目の優勝を成し遂げた世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)。その彼は現時点で3月8日から開催される「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/ハードコート/ATP1000)と同月22日に開幕する「マイアミ・オープン」(アメリカ・マイアミ/ハードコート/ATP1000)のマスターズ2大会で、2年連続の欠場を余儀なくされる可能性が高まっている。

 これは先月初旬に米運輸保安庁が公式声明文で同国における外国人渡航者への新型コロナウイルス・ワクチン接種義務付けが「今年の4月10日まで延長される」と発表したことによるものだ。周知の通りグルテンアレルギーを持つことで知られる35歳のジョコビッチは、「身体を気遣いたい」という理由でワクチンを接種していない。すなわち3月になっても変更が加えられなかった場合、同選手は昨年同様アメリカに足を踏み入れることができなくなるというわけだ。

 ただ当のジョコビッチは「まだ正式に決まったものではないと思う」と語った一方で、「もし正式なものなら、そういうことなのだろう。アメリカに行けないなら、(もちろん)行くことはできない」と、どのような結果になろうとも米国側の決定を潔く受け入れる意志を示している。

 そんななかでインディアンウェルズ大会のトーナメントディレクターを務める元世界2位のトミー・ハース氏(ドイツ/44歳)は、35歳のレジェンドが同大会に何とか出場できるようにするために「主催者側で可能な限りのことを行なっている」とコメント。「明らかに問題なのは、そのワクチン接種義務が解除されるのが4月中旬であり、彼がまたしてもアメリカに入国できなくなるということだ」と述べたうえで、複雑な心境を見せながらもこう続けた。
 
「(国が)もう少し早く接種義務を解除して、インディアンウェルズとマイアミでプレーできるようになればいいんだけどね。彼は出場したいと思っているだろうから、チャンスを与えてあげないと。そうなればいいのだが……」

「もし、彼がこれらの大会に来なかったり、来ることを許されなかったりしたら、私の目には不名誉なことのように映るだろう」

 ジョー・バイデン米大統領はゼロコロナ政策を緩和した中国における感染者の急増を受け、現地1月30日に「新型コロナの緊急事態宣言は再延長され、5月11日に解除する」と正式に発表。だが一方でハース氏の願いはむなしく、入国時のワクチン接種要件の変更には言及しなかった。やはり現状ではジョコビッチがインディアンウェルズとマイアミのコートに立つ姿を見るのは難しそうだ。

 なおオーストラリアシーズンで左太ももを負傷したジョコビッチは、2月27日に開幕する「ドバイ選手権」(アラブ首長国連邦・ドバイ/ハードコート/ATP500)でツアーに復帰する予定だ。

文●中村光佑

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