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【テニスギア講座】実はとても重要なパーツ! テニスシューズの「シャンク」についてゼロから学ぶ<SMASH>

松尾高司

2023.03.25

プロの高速ラリーでは強烈な踏み込みが繰り返される。そんな中でも足元をガッチリ支え、横ブレさせないのがシューズに組み込まれたシャンク(ソール写真の囲み部分)だ。写真:Getty Images、松尾高司

プロの高速ラリーでは強烈な踏み込みが繰り返される。そんな中でも足元をガッチリ支え、横ブレさせないのがシューズに組み込まれたシャンク(ソール写真の囲み部分)だ。写真:Getty Images、松尾高司

 今回のテーマはテニスシューズの「シャンク」です。何それ? と思う方もいるかもしれませんが、靴底のとても重要なパーツです。

「シャンク」とはそもそも「足裏のアーチ=土踏まず」という意味です。土踏まずは「足の衝撃緩和装置」「足裏のバネ」など、色んな機能を果たす重要な部位。シャンクはアーチの落ち込みすぎを防止して足の機能を助け、体重がグッとかかっても、靴がゆがまないようにする役割を果たしてくれる芯材で、靴の変形を防いでもくれるのです。

 初めてテニスシューズに採用されたのは、2001年に発売されたアシックス『プレステージライト』だったように記憶します。このシューズは「テニスシューズは概して重いけど、軽いとダメなの?」という発想から生まれました。

 ランニングシューズで高い技術を持つアシックスですから、軽いシューズを作るのはたやすかったのですが、軽量化によって低下してしまうソールの強度を補うために、中足部にTPU(樹脂製)のシャンクを搭載したのです。これ以降、ほとんど全てのメーカーが取り入れるようになります。

 でも、全てのテニスシューズに入っているわけではありません。樹脂製シャンクはそれなりに重く、軽さが魅力のエントリーモデルなどには装着されていません。踏み込む力がさほど大きくない入門レベル向けのモデルには、TPUシャンクの強靭さはあまり必要ないと言っていいでしょう。

 逆に、競技レベルが高くなるほど、強靭なシャンクが必要となり、どうしても大きくなりますから、シューズの総重量にも影響します。それでも、高い安定性を必要とするプレーヤーのための上級モデルには、ガッチリしたTPUシャンクが装着されているのです。
 
 アーチ機能をサポートするために発展したシャンクですが、次第に別の機能も果たすようになります。例えば足のねじれをコントロールする役目です。足には「適切な屈曲位置」と「屈曲してはいけない方向」があるため、テニスシューズは、足自体が曲がる位置と同じ所で曲がらなければなりません。シャンクは、それを制御する役目も果たします。

 また、内側方向へ踏み出す場合は曲がりやすく、外側へ踏み出す時には曲がりにくいのがいいですね。それが簡単に曲がってしまうと、足首の内転捻挫などが起きやすくなるため、曲がり方をコントロールする機能を持ったシャンクが作られ、安全で効率の良いフットワークを支えます。

 さらに、本来ならば中足部に据えられるだけのシャンクですが、より推進力サポート機能を持たせるために、薄いシャンクが前足部まで伸びて、曲がった足が元に戻りやすくする「バネ機能」を持たせるものも登場しています。

 皆さんがテニスシューズを購入する時は、見た目のデザインだけで選ぶのではなく、自分にとってどの程度のサポートが必要かを踏まえて、それに応じたシャンクが装備されているものをチョイスしましょう。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2021年6月号より抜粋・再編集

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