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アルカラスのコーチがシーズン終盤の苦戦を分析「試合でより一貫性のある選手になる必要がある」<SMASH>

中村光佑

2023.11.19

今年9月の全米以降はややスローダウンしているアルカラス(右)について、コーチを務める元世界王者のフェレーロ氏(左)がその原因と改善策を語った。(C)Getty Images

 男子テニス世界ランク2位のカルロス・アルカラス(スペイン/20歳)のコーチを務めるフアン・カルロス・フェレーロ氏(スペイン/元1位/43歳)が、母国のニュースメディア『Marca』のインタビューに登場。このところアルカラスの苦戦が続いていることに言及し、「彼は1年中大会が続くことを学ぶ必要がある」と愛弟子の改善すべき点を指摘した。

 7月のウインブルドンでの四大大会2勝目を含むツアー6勝を挙げるなど、今季も驚異的な成績を残してきたアルカラス。ところがここ最近はやや失速気味である。

 先月初旬の「チャイナ・オープン」(ATP500)では準決勝に進出したものの、翌週の「ロレックス・上海マスターズ」(ATP1000)はベスト16止まり。今月初旬に出場した「ロレックス・パリマスターズ」(ATP1000)は初戦(2回戦)敗退を喫していた。

 それでも今週出場したシーズン最終戦「Nitto ATPファイナルズ」(11月12日~19日/イタリア・トリノ/インドアハードコート/FIN)では、ラウンドロビン(総当たり戦)で2勝1敗とし、グループ首位で準決勝へ進出。だが現地19日に行なわれた準決勝では今季幾度となく熱戦を演じてきた世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に3-6、2-6のストレートで完敗を喫し、自身初のファイナルズ決勝進出とはならなかった。

 タイトル防衛を逃した9月の全米オープン以降、アルカラスの調子がなかなか上がらなかったことについて、フェレーロ氏は簡潔にこう分析する。

「全米が終わってからは、彼にとって少し難しかったと思う。おそらく、各大会で準決勝か決勝に進出しなければならないといったプレッシャーもあり、それが精神的な負担となっていたのだろう」
 
 フェレーロ氏はプロ転向からわずか5年の間に多くの成功を収めたアルカラスの抜群のセンスを高く評価する一方、「さらなる飛躍を遂げるためにも改善すべき点は多い」と語る。その中でアルカラスが取り組むべき最重要課題について同氏はこう続けた。

「彼は自分を解放しすぎず、試合でより一貫性のある選手になる必要がある。彼が自分を解放すると常に最高のレベルで良いプレーをするのは事実だが、時々彼は(自分をコントロールできずに)失敗を犯してしまう。そこは大きく改善していかなければならない」

 また同氏はアルカラスのメンタルの強化も「チームの課題に挙げている」と明かす。「過剰な負担が少しばかりカルロスに影響を及ぼしているようだ」と述べつつも、トッププレーヤーとして過酷なスケジュールをこなしながらプレッシャーに対処する術を身に着けることの重要性を以下のように語った。

「トップ選手たちはより多くの試合、より多くのプレッシャー、ほぼ毎大会で勝たなければならないというほぼ義務的な要素を受け入れながら戦っている。プロとして、テニスの世界ではツアー転戦が1月から11月まで続くことを理解し始めるべきだと思う」

 フェレーロ氏の厳しい言葉はずっとそばで見守ってきたからこそのものだろう。かけがえのない恩師の期待を胸に、来季もアルカラスがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみにしたい。

文●中村光佑

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