海外テニス

錦織圭が「ギリギリ楽しめないくらいのレベル」と総括した復帰戦。手応えと共に「1試合を通して90点の試合を…」と課題も<SMASH>

内田暁

2024.03.22

約8カ月ぶりの復帰戦で敗れた錦織圭だが、「ストロークは意外と良かった」と収穫も手にした(写真は昨年のアトランタOP)。(C)Getty Images

 うれしさ、もどかしさ、悔い、そして希望――。

 それら全ての感情が、玉虫色に、その時々で濃度を変えつつ入り混じるような、錦織圭の復帰戦だった。

 公式戦のコートに立つのは、昨年7月末以来。多くのファンに、関係者に、そして報道陣たちにも「おかえり、ケイ」と祝福された男子テニスツアー「マイアミ・オープン」の1回戦は、世界40位のセバスチャン・オフナーに3-6、4-6で敗れる結果となった。

 両者の対戦は、今回が初めて。対戦を控えた時点で錦織は、急成長中の27歳を「サーブが良く、フラットでボールを叩いてくる印象」と警戒していた。

 確かにオフナーは、昨シーズンにランキングを150位も急上昇させたニューフェース。ただ今季は厳しい戦いが続き、「BNPパリバ・オープン」、さらに続くATPチャレンジャーでも初戦敗退。

「ここ数週間は負けが続き、自信を失い、もがき苦しんでいた」と、オフナーは打ち明ける。そのような中、今回の初戦で錦織との対戦が決まった時は、「試合に出ていないとはいえ、長くトップにいた選手。とても難しい試合になる」と受け止めていたという。
 
 試合序盤は、そんな両者の警戒心が絡み合い、互いの出方を探るような攻防となった。サーブが強烈なオフナーだが、ラリー戦になると力んだようなミスが増える。第1ゲームで、重ねたデュースは4回。錦織にはブレークポイントもあったが、この場面では逆に錦織が、フォアのチャンスボールをネットにかけた。

 スタートダッシュの好機を逃した錦織は、続く自身のサービスゲームを落とすと、第3ゲームでも2連続のブレークチャンスを生かせない。

 それでも要所要所で、"らしい"プレーが光を放つ。サーブで相手を押し込み、前に出て強打すると見せかけつつドロップショットを沈める洒脱なプレーで、見る者のため息を誘った。美しいフォアの逆クロスウイナーも、観客たちの歓声を呼ぶ。

 ただ結果的に、序盤で許したリードが、試合そのものの流れを左右したようではあった。第2セットも、創造的で美しいショットを繰り出すも、並走状態の第7ゲームで許したブレークの差を、詰め切ることはできなかった。
 
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「簡単にゲームを渡してしまう時間帯が少しあった」敗戦の中で得た手応えと課題