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海外テニス

世界1位シナーから禁止薬物検出も、出場停止処分は科されず。本人に「過失はない」との判定に波紋<SMASH>

中村光佑

2024.08.21

2度の検査で禁止薬物の陽性反応を示したシナー。しかしサポートメンバーのマッサージによって体内に入ったという主張が認められ、出場停止とはならなかった。(C)Getty Images

2度の検査で禁止薬物の陽性反応を示したシナー。しかしサポートメンバーのマッサージによって体内に入ったという主張が認められ、出場停止とはならなかった。(C)Getty Images

 テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」は8月20日に公式声明を発表し、今年3月に行なわれたドーピング検査で男子テニス現世界ランク1位のヤニック・シナー(イタリア)から禁止薬物が検出されたものの、即時に無実が証明されたと報告した。

 同声明によると、シナーは3月のマスターズ1000大会「BNPパリバ・オープン」で実施されたドーピング検査で検体を提出したところ、低濃度ながら禁止物質に指定されている「クロステボル」(筋肉増強効果のある合成アナボリックスステロイド)が検出。その8日後に行なわれた2度目の検査でも、同じく低濃度のクロステボルに対する陽性反応を示したという。

 通常禁止物質が検出されると自動的に暫定出場停止処分が適用されるが、同時に違反が発覚した選手には出場停止処分の解除を求める異議申し立ての権利が付与される。シナーは2件の違反に対してこの権利を行使し、それが認められたため、BNPパリバ・オープン以降の大会でも問題なくプレーできたとのことだ。

 なおITIAは禁止物質が検出された経緯についてシナー本人から説明を受けたとし、詳細を次のように報告している。

「シナー選手からは、サポートチームのメンバーの1人が負った小さな傷を治療するために、イタリア国内で入手できるクロステボル入りの市販スプレーを肌に塗ったところ、そのメンバーを経由して禁止物質が体内に入ってしまったとの説明を受けました。同サポートメンバーが3月5日から13日の間にスプレーを塗布し、その期間に毎日シナー選手にマッサージとスポーツセラピーも提供していたため、気付かないうちに皮膚から禁止物質が取り込まれたとのことです」
 
 続けてITIAは「科学専門家との協議」や「シナー選手とそのサポートチームを対象とする複数回にわたる詳細なインタビューを含む徹底的な調査」の結果、今回のドーピング違反は故意ではなかったとし、シナー本人の過失も特になかったことが認められたと発表。

 また2024年8月15日にスポーツの紛争解決を図る英国の非営利団体「スポーツ・レゾリューション」で開かれた審問でも今回の一件には「過失がない」との判断が下されたため、シナーの資格を停止しないことになったと伝えた。

 この裁定を受け、ITIAのCEO(最高経営責任者)を務めるカレン・ムーアハウス氏は改めて一連の騒動を振り返りつつ、以下のコメントを残した。

「我々は(シナー選手の)陽性反応を非常に深刻に受け止めており、常にWADA(世界ドーピング防止機構)が定めた厳格なプロセスを適用していくつもりです。ITIAは陽性反応に至った状況について徹底的な調査を実施し、シナー氏とその代理人はこれに全面的に協力しました。調査後、ITIAはクロステボルの検出に関する選手の説明と、その物質の検出は故意ではなかったという説明を受け入れ、それらの説明は裁定機関にも受け入れられました。選手の過失の程度に関する決定を迅速かつ明確に下した独立裁定機関に感謝しています」

 一方、各種規則に則る形でシナーはインディアンウェルズベスト4で得た400ポイントと賞金は全て没収されることになった。とはいえ結果的にはほぼ無罪判定であり、現役選手からも裁定への反発の声は高まっている。しばらくは混乱が続きそうだ。

文●中村光佑

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