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海外テニス

大坂なおみをテニスコートで世界有数の“スーパーヒーロー”に変身させる「奇妙な感覚」<SMASH>

内田暁

2024.08.29

お気に入りのテニスウェアを着た瞬間からまるでテレビアニメのヒーローのようになれるという大坂なおみは、今週開幕した全米OP初戦で世界10位をわずか64分で撃破した。(C)Getty Images

お気に入りのテニスウェアを着た瞬間からまるでテレビアニメのヒーローのようになれるという大坂なおみは、今週開幕した全米OP初戦で世界10位をわずか64分で撃破した。(C)Getty Images

 新緑を思わせるグリーンのウェアに純白のジャケットをはおって、彼女は、ルイアームストロングスタジアムに姿を現した。

 跳ねるように歩むたび、スコートのフリルが軽やかにひるがえり、背中の大きなリボンが揺れる。それは彼女自身が色を選び、彼女のアイディアも取り入れながらデザインされた、彼女だけのウェア。同時に大坂なおみを、26歳の一人の女性から、4度のグランドスラム優勝を誇る世界で最も有名な女性アスリートへと“変身”させるための装備でもあるのだろう。

「このアウトフィットに身を包んだ瞬間、まるで“スーパースーツ”を着たかのように、自分が切り替わるの」

 全米オープンの1回戦。大会第10シードのエレナ・オスタペンコ(ラトビア/世界ランク10位)に快勝した大坂なおみは、小さく笑って秘密を明かした。

「まるで、自分が自分の身体にいないよう」

 そんな「奇妙な感覚」を彼女が明かしたのは、わずか2週間前のこと。ソーシャルメディアで、ここしばらく感じてきた不安や苦悩を、赤裸々に文字に綴った。

 その彼女がニューヨークのナショナルテニスセンターを訪れ、会場の空気に触れた時、身体の内にみなぎる力を感じたという。

「ここは、私にとってのホーム。その感覚が、私に自信を与えてくれる」
 
 ニューヨークのロングアイランドで幼少期を過ごした彼女にとって、全米オープン会場は、父や姉と共に練習したテニスキャリアの始まりの地。さらに「お祭りのよう」な全米オープンの夏が訪れると、多くの選手たちを目の当たりにした場所である。

 そして何より、2018年と2022年に優勝トロフィーを抱き、子どもの頃からの夢を叶えたステージ。だからこそ今回の試合前にも、彼女は鏡をのぞき込むと、そこに映る自分に語り掛けたという。

「ねえ、あなたはここで凄いことをしてきた。それを再現できないはずはないでしょ?」

 それがいわば、彼女のスーパーヒーローへの変身の儀式だ。

 2024年の全米オープン初戦で対戦したエレナ・オスタペンコは、2017年全仏オープン優勝者にして、ツアーきってのアタッカー。どこからでもウイナーを奪える強打の持ち主は、多くのトップ選手たちから恐れられる存在だ。ただ大坂は立ち上がりから、そのオスタペンコの強打に追いつき、ボールを深く打ち返し、相手のミスを誘っていく。
 
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