スキルフルで躍動感あふれるプレーと歯に衣着せぬ物言いでファンを魅了してきた男子テニス元世界ランク13位のニック・キリオス（オーストラリア）が、ついに選手としてコートに戻ってくる。来年１月に母国で開催される四大大会「全豪オープン」（2025年１月12日～26日／オーストラリア・メルボルン／ハードコート）への出場を正式に表明したのだ。

　2022年７月のウインブルドンで四大大会初のシングルス決勝進出を果たした29歳のキリオスは、同年10月の「ジャパン・オープン」（日本・東京／ハード／ATP500）準々決勝を棄権してそのまま戦線を離脱。昨年６月の「ボス・オープン」（ドイツ・シュツットガルト／芝／ATP250）でようやく実戦復帰を果たすも、１回戦でウー・イービン（中国／現404位）に敗れると再びツアーから離れ、10月中旬には世界ランキングも消滅した。

　ほぼ２シーズンにわたって公式戦ではプレーできていないキリオスだが、SNSでの積極的な発信や、全米オープンでのオンコートインタビュアーといった仕事もあり、その存在感は全く薄れていない。そんな彼がツアーに戻ってくるとなれば、ファンもさぞうれしいことだろう。

　ATP（男子プロテニス協会）公式サイトによれば、キリオスは現地10月17日（木）にオーストラリア・シドニーで開かれた世界最大級の複合イベント「SXSW（サウス・バイ・サウスウエスト）」に出席し、「来夏の全豪オープンに出場するよ」と明言。ここ最近の同胞たちの活躍を称賛する形で「地元の観客の前でプレーするのが恋しいよ。今はアレックス・デミノー（９位）のような素晴らしいテニスをする選手たちが大勢いるしね」と続けた。
  　キリオスといえば以前までは度々早期での引退をほのめかしていたが、離脱期間が予想以上に長くなったこともあってか、考えが大きく変わったようだ。医師にも最低でもあと数年は現役でプレーしたいと告げたという。

「僕のケガはひどいものだった。医師からは“おそらくもうプレーできないだろう”と言われたよ。それでも『とにかくあと２、３年はキャリアを続けられるように頑張る』と伝えたんだ。ここ２、３年はひどい時期を過ごしたけど、ただただ母国ファンの前でプレーするためにあの（全豪の）コートに立って、観客を盛り上げながらプレーしたい。それが良いか悪いかは別として、間違いなくとても楽しいだろう。僕自身も楽しみにしているよ」

　復帰後の明確な目標もあると語る。最後は「コートに戻ってプレーしたいと思う唯一のモチベーションは、四大大会（のシングルス）で優勝すること。もう一度挑戦するつもりだ」と力強く締めくくった。

　キリオスが予定通り来年の全豪でプレーできれば、同郷の親友タナシ・コキナキス（現83位）と組んだ男子ダブルスで四大大会初優勝を果たした22年以来となる。シングルスでの四大大会初制覇もホームグラウンドの全豪で達成できれば本望だろう。無論道のりは険しいが、ぜひとも自国ファンの前で頂点に立つ姿を見せてもらいたい。

文●中村光佑

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