ラファエル・ナダルが38歳で引退したように、テニス選手の引退年齢は引き上げられています。選手は科学的にもフィジカルに取り組んでいますし、用具が進化している影響もあるでしょう。また、協会も10年以上のキャリアがある選手に対しては、本戦のワイルドカード(主催者推薦)を通常の倍である年間6本まで可能にしています。つまり、実力がある選手ならば、ワイルドカードをうまく使い、キャリアを伸ばすことができる仕組みになっているのです。
選手寿命が延びたことで、ツアー大会に出場するレベルの選手数が増加しています。その上、低年齢化も進んでおり、上は抜けない、下からは突き上げるという状態になってきました。
この状況でツアーレベルに入っていくためには、個性が必要になってきます。勝負できる武器があるテニスが求められるでしょう。勝敗だけではなくワイルドカードにしても、大会側はお客さんを集められる選手を呼びたいわけです。すると、知名度があるベテラン選手には提供しやすいですね。残ったワイルドカードを勝ち取るには、何か引っかかる存在である必要があります。それが個性です。
層が厚くなることで、若手選手は今まで以上に厳しい戦いに向かわなくてはなりません。しかし、上位のベテラン勢がいることは、見方を変えればチャンスもあります。会場に経験豊富なベテランがいるわけですから、1年のツアーの中での大会期間中の練習の取り組み方、トレーニングのボリュームや試合前後に摂取するもの、試合前後の時間の過ごし方など、実際に見て学べる機会があるわけです。その中で何を取り入れていくかは、自分やチームで考えればいいのです。少しでもトップ選手といられる時間があることは、学ぶ姿勢があれば確実にプラスになります。
その良い例が、今年ブレークした世界ランク4位のジャスミン・パオリーニ(イタリア)でしょう。同国の元世界5位で37歳のサラ・エラーニとペアを組んで一緒に過ごしてダブルスで成績を出し、今年のブレークにつながりました。こういう例が、今後各国で生まれるかもしれません。
技術的な面や戦い方はコーチが教えることができますが、それ以外の部分はなかなか習得が難しいものです。ツアーは長く、試合に負けることがあって当然という状況で、精神状態を保たなくてはいけません。そういう難しい部分に関しては、仲が良くても同年代の選手で打ち明け合ってどうにかなることはないでしょう。“気付き”が必要な部分では、少し上の年代のトップ選手の存在が助けになるはずです。
ツアーレベルの層が厚くなることは、試合内容の充実につながりますから、テニスファンにとっては良いことです。選手もこの状況を見極めて、ツアーで定着できる道を模索してください。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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その良い例が、今年ブレークした世界ランク4位のジャスミン・パオリーニ(イタリア)でしょう。同国の元世界5位で37歳のサラ・エラーニとペアを組んで一緒に過ごしてダブルスで成績を出し、今年のブレークにつながりました。こういう例が、今後各国で生まれるかもしれません。
技術的な面や戦い方はコーチが教えることができますが、それ以外の部分はなかなか習得が難しいものです。ツアーは長く、試合に負けることがあって当然という状況で、精神状態を保たなくてはいけません。そういう難しい部分に関しては、仲が良くても同年代の選手で打ち明け合ってどうにかなることはないでしょう。“気付き”が必要な部分では、少し上の年代のトップ選手の存在が助けになるはずです。
ツアーレベルの層が厚くなることは、試合内容の充実につながりますから、テニスファンにとっては良いことです。選手もこの状況を見極めて、ツアーで定着できる道を模索してください。
文●伊達公子
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