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ルブレフがシナーを擁護し、不明瞭なドーピング規定に苦言「もう少しわかりやすいシステムであるべきだ」<SMASH>

中村光佑

2024.12.12

ルブレフ(左)はドーピング問題を抱えながら見事な成績を残したシナー(右)を評価し、むしろ裁定規則の曖昧さに疑問を投げかけた。(C)Getty Images

 テニス界で波紋を広げているドーピング問題。最近は選手によって処分の内容が大きく異なっており、ネット上では様々な意見が飛び交っている。そんな中で男子世界ランク8位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア/27歳)は、そもそも反ドーピングシステムの規定が複雑すぎることが度重なるトラブルを招いていると指摘する。

 欧米スポーツメディア『Eurosport』によるとルブレフは、今年3月のドーピング検査で2度にわたり禁止薬物クロステボルが検出されたものの出場停止処分が科されずに批判を浴びているヤニック・シナー(イタリア/1位/23歳)を擁護。今季のシナーがその問題で多大なストレスを抱えながら、四大大会2勝を含むツアー8勝を挙げるなど大車輪の活躍を見せたことにも触れ、下記のようにコメントした。

「どの選手にもそんなこと(ドーピング違反の発覚)は起きてほしくない。彼(シナー)がその間にずっと感じていたストレスや不安の度合いは想像もできない。彼はそれらをうまく乗り越えてベストなプレーを続け、ツアーを支配して多くのタイトルを獲得した。とても印象的だったよ」
 
 直近のシナーとイガ・シフィオンテク(ポーランド/女子2位)をめぐるドーピング問題は両者ともに処分が非常に軽かった一方、元女王のシモナ・ハレップ(ルーマニア/現877位)は4年間の資格停止(※その後9カ月に軽減)、カミール・マイフシャク(ポーランド/男子120位)は13カ月にわたって出場不可となり、その差は歴然。これを受けてシナーやシフィオンテクのような上位ランク選手は優遇されているのではないかとの疑問の声が多く上がっている。

 だがどちらかと言えばルブレフは、テニスの反ドーピングシステム自体があまりにも厳格かつ不明瞭である点を不満に思っている様子だ。「反ドーピングシステムはもう少しわかりやすいものであるべきだと思う。テニスのルールは他のスポーツよりも非常に厳しい。たとえ故意でなくても、ちょっとしたミスが選手生命を脅かす可能性があると思う」と自身の意見を率直に述べた。

 ちなみにシナーのドーピング問題はまだ完全に終わったわけではない。なぜなら9月に世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が、無罪と裁定した第三者機関「ITIA」に対して控訴し、シナーに1年から2年の出場停止処分を求める意向を表明したからだ。また12月4日に約1カ月の出場停止処分が解除されたシフィオンテクについてもWADAが控訴する可能性は残されている。

文●中村光佑

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