現在開催中のテニス四大大会「全仏オープン」の男子シングルスで初のベスト4進出を決めた世界ランキング7位のロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)だが、試合中の"あるまじき行為"が物議を醸している。
事件は現地6月3日に行なわれたフランシス・ティアフォー(アメリカ/同16位)との準々決勝で起きた。
第1セットはムゼッティが6-2で難なく先取するも、第2セットは先にブレークされ追いかける展開に。迎えた第8ゲームをティアフォーにキープされて3-5となった直後、サービスゲームに入ろうとポジションについたムゼッティに反スポーツマンシップ行為による警告が言い渡された。
この時ボールボーイから2つのボールを渡されたムゼッティは、最初のボールを取り損ね、それを手で拾わずに左足で軽く蹴った。ところが蹴ったボールがあろうことか近くにいた線審の胸付近を直撃。すぐにムゼッティは線審へラケットを掲げて謝罪の意を示したが、反対サイドから事故の瞬間を見ていたティアフォーが主審に訴え、ムゼッティは警告を受けた。
しかし失格等の重大なペナルティは科されないまま試合は再開。結局第2セットを4-6で落としたムゼッティだったが、第3セットは7-5、第4セットは6-2で奪い、昨年7月のウインブルドン以来となる四大大会2度目の4強入りを果たした。
試合後の記者会見でムゼッティは問題のシーンについてこう弁明した。
「本当に不運な偶然の出来事だった。正直、"大会から追放されるかもしれない"と少し怖かったが、もちろん誰にも危害なんか加えたくなかった。それで僕はすぐに線審の所へ行き、『申し訳ない。謝罪します』と言った。警告は正しいジャッジだった。審判は故意ではなかったとみなして、試合を続けさせてくれたのだと思う」
今回の事件に似ているのが、2020年全米オープン4回戦での出来事だ。ノバク・ジョコビッチ(セルビア/元1位/現6位)がゲーム間にコート後方に向けて打ったボールが線審の喉元に直撃。ジョコビッチはムゼッティとは異なり、大会主催者や審判によるコート上での長い協議の末に失格処分を受けていた。
敗れたティアフォーはこうした前例があるにもかかわらず、ボールを蹴って線審に当てる危険行為を行なったムゼッティが失格にならなかったことを不満に思っている様子だ。ただ会見では「彼(ムゼッティ)がそういう行動をしたのは事実で、正直滑稽なシーンだと思った。でも結局は何も起きなかったのだから、特に言うことはない。明らかに処分には一貫性がないけど、それが現実だ」と述べるにとどめた。
過去に失格処分を受けた選手がいたことと照らせば、「なぜムゼッティは許されたのか」との声が上がるのも無理はないだろう。ティアフォーが指摘するテニス界での"処分の一貫性のなさ"が、今回の一件で改めて浮き彫りになってしまった。
文●中村光佑
【動画】ムゼッティが無造作に蹴ったボールが線審を直撃した場面
【関連記事】「心が空っぽになった」線審にボール直撃で失格のジョコビッチ。ポイントの失効や罰金処分に
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事件は現地6月3日に行なわれたフランシス・ティアフォー(アメリカ/同16位)との準々決勝で起きた。
第1セットはムゼッティが6-2で難なく先取するも、第2セットは先にブレークされ追いかける展開に。迎えた第8ゲームをティアフォーにキープされて3-5となった直後、サービスゲームに入ろうとポジションについたムゼッティに反スポーツマンシップ行為による警告が言い渡された。
この時ボールボーイから2つのボールを渡されたムゼッティは、最初のボールを取り損ね、それを手で拾わずに左足で軽く蹴った。ところが蹴ったボールがあろうことか近くにいた線審の胸付近を直撃。すぐにムゼッティは線審へラケットを掲げて謝罪の意を示したが、反対サイドから事故の瞬間を見ていたティアフォーが主審に訴え、ムゼッティは警告を受けた。
しかし失格等の重大なペナルティは科されないまま試合は再開。結局第2セットを4-6で落としたムゼッティだったが、第3セットは7-5、第4セットは6-2で奪い、昨年7月のウインブルドン以来となる四大大会2度目の4強入りを果たした。
試合後の記者会見でムゼッティは問題のシーンについてこう弁明した。
「本当に不運な偶然の出来事だった。正直、"大会から追放されるかもしれない"と少し怖かったが、もちろん誰にも危害なんか加えたくなかった。それで僕はすぐに線審の所へ行き、『申し訳ない。謝罪します』と言った。警告は正しいジャッジだった。審判は故意ではなかったとみなして、試合を続けさせてくれたのだと思う」
今回の事件に似ているのが、2020年全米オープン4回戦での出来事だ。ノバク・ジョコビッチ(セルビア/元1位/現6位)がゲーム間にコート後方に向けて打ったボールが線審の喉元に直撃。ジョコビッチはムゼッティとは異なり、大会主催者や審判によるコート上での長い協議の末に失格処分を受けていた。
敗れたティアフォーはこうした前例があるにもかかわらず、ボールを蹴って線審に当てる危険行為を行なったムゼッティが失格にならなかったことを不満に思っている様子だ。ただ会見では「彼(ムゼッティ)がそういう行動をしたのは事実で、正直滑稽なシーンだと思った。でも結局は何も起きなかったのだから、特に言うことはない。明らかに処分には一貫性がないけど、それが現実だ」と述べるにとどめた。
過去に失格処分を受けた選手がいたことと照らせば、「なぜムゼッティは許されたのか」との声が上がるのも無理はないだろう。ティアフォーが指摘するテニス界での"処分の一貫性のなさ"が、今回の一件で改めて浮き彫りになってしまった。
文●中村光佑
【動画】ムゼッティが無造作に蹴ったボールが線審を直撃した場面
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