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国内テニス

「たかが柏のチャンピオン」年齢という概念のない42歳、最年長の世界ランカー松井俊英が見る夢【国内テニス】

内田暁

2020.07.28

「ここからどこまでできるか、身体のことも含め進化できるのか?」と松井は自分自身に向かって問い続ける。写真:内田暁

「ここからどこまでできるか、身体のことも含め進化できるのか?」と松井は自分自身に向かって問い続ける。写真:内田暁

「引退しても何かしら仕事をするとしたら、結局は自分を磨いたり、一生懸命やらなくちゃダメじゃないですか。コーチにしても解説にしてもテニスに関わっていくだろうし、やる以上は真摯にやらなくてはいけないんで」

 その達観のなかで今なお現役を続けるモチベーションは、いわば「夢」にあるという。

「今、長くテニスをやることをサポートしてくれる人も、応援してくれる方もいる。できるだけそこに応えていきたいし、変な話、そこに夢があるかなと思っているんです。

 若い人はグランドスラムを目指す夢があるけれど、僕は僕で、ここからどこまでできるか、身体のことも含め進化できるのか? そこがモチベーションかもしれません」
 
 さらにはもう一点、多くの日本人が抱く年齢に対する先入観や、それに伴うメンタルバリアを解くことも、彼を走らせる原動力だ。

「去年はシングルスでも20代の選手に勝ったし、年齢差勝利の記録も作った。今の時代、30代中盤なんて全然若いし、まだまだできる。日本人は、50歳までには課長になっていなくちゃとか、この年齢までに結婚しなきゃと考えがちですが、そういう年齢の概念が僕には全くなくて。そんなところをテニスでも示していきたいですね」
 
 既成概念から自由な彼が描くテニス界のビジョンには、国内プロテニスの活性化や、アジア各国のチャンピオンが集い雌雄を決する「アジア・チャンピオンズリーグ」などの未来も含まれる。今回参戦したBeat Covid-19 Openも、そのような可能性への一つの証左だと彼は見た。

「この大会でも、コアなファンの方たちはすっごく見て応援してくれている。国内で大会やって、それで選手としてメシ食って色んなところに還元できれば……そういう時代があっても良いと思います。

 ここからは僕の持論ですが、アジアでチャンピオンズリーグみたいのを作っても全然良いと思うんです。錦織とチョン・ヒョンが日本で決勝をやれば、ファンだって高いお金払を払って海外行かなくても、良い試合が見られる訳ですから」

 そうなったら僕、もういっぺん本気で鍛えますよ――! 

 そう言って、42歳は不敵に笑う。

「柏のチャンピオンから、アジアのチャンピオンへ!」

 そこには確かに、スポーツだからこそ描ける、夢がある。

◆松井俊英(まついとしひで)
1978年4月19日生まれ/千葉県柏市出身。ASIA PARTNERSHIP FUND GROUP所属。身長179㎝、体重76kg、右利き、片手打ちバックハンド。最年長ATPランカーとして知られるダブルスのスペシャリストで、2020年「ATP CUP」には日本代表として参戦。主な戦績は、アジア大会06年銀メダル、10年銅メダル。全日本選手権複優勝4回(05、07、08、09年)。デビスカップ代表(06、10年)。自己最高位ダブルス130位(18年5月7日付)、同シングルス261位(06年6月12日付)。

取材・文●内田暁

【写真】若手と組んだエキジビションで観客を沸かせる松井
 

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