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海外テニス

“天国から地獄へ”11年前に錦織圭を襲った悪夢は成長へのステップだった【海外テニス】

中山和義

2020.08.14

生まれて初めての試練を乗り越えてコートに戻ってきた錦織は、新たなモチベーションを手に再び進撃を開始した(写真は2010年の全仏)。(C)GettyImages

生まれて初めての試練を乗り越えてコートに戻ってきた錦織は、新たなモチベーションを手に再び進撃を開始した(写真は2010年の全仏)。(C)GettyImages

 リハビリは左手でスポンジボールを打つところからスタートした。コーチから「これまでの打ち方をしていたら、またヒジを壊す。打ち方を変えよう」と提案されると、素直にそれに従った。

 このレベルの選手だと幼い頃からのフォームを変えるには大きな抵抗があるのが普通だが、彼にはアドバイスを聞く謙虚さと、それを取り入れて自分のものにできる肉体の柔軟性もあった。

 2010年2月、思い出のデルレイビーチで念願の戦線復帰を果たす。だが、ケガをする前のようにプレーはできなかった。「自分のしたいテニスをするのか、それとも勝つテニスをするのか? 今の自分の中ではこの2つがマッチしていないんです…」と悩みを口にする錦織。それでも彼は、この難問に答えを出す。
 
 理想のテニスを目指し、楽しんでプレーをする方を優先したのである。ミスの多さが原因で負けてしまう試合もあったが、すぐに調子を取り戻し、その後はチャレンジャー(下部大会)で4勝するなど、グランドスラムに出場できるまでランキングを戻した。

 ツアー優勝を飾った翌年をケガでほとんど棒に振ってしまった錦織は、それまでのポイントを失ってゼロからのスタートとなった。しかし、この経験から得たものは大きかった。

「今いる自分は決して自分の力だけではないことを忘れず、テニスができることに感謝しつつ、これからも上を目指して頑張ります」

 負傷による長期離脱を経て、テニスができる喜びを改めて知ることになった、2010年に語られた錦織の言葉である。

文●中山和義

※月刊スマッシュ2019年12月号から抜粋・再編集

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