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海外テニス

錦織圭ローマ大会2回戦敗退で見えてきた「経験」という名の新たなる課題【海外テニス】

内田暁

2020.09.18

地元イタリアの18歳を相手に苦杯を舐めさせられた錦織だが、こうした敗戦は想定内の結果と捕らえているようだ。(C)Getty Images

地元イタリアの18歳を相手に苦杯を舐めさせられた錦織だが、こうした敗戦は想定内の結果と捕らえているようだ。(C)Getty Images

 結果を先に言ってしまうと、平衡状態で進んだ錦織サービスの第9ゲーム途中で、停電による試合中断というアクシデントが発生。再開後の錦織は5ポイント中4ポイントを失い、このゲームを落とし、そして試合そのものに敗れた。

 ただ当の錦織は、中断そのものは「人生で初めてでびっくりはしましたが、そんなに気にならなかった」と敗因にあげることはしない。それ以上に彼が悔いたのは、中断直前の相手サービスゲームでの、自らの一つのプレーだった。

 このゲームでのムゼッティはやや硬さが見られ、最初のポイントをフォアのイージーミスで失うと、続くポイントではダブルフォールト。次のサービスもファーストを外し、セカンドサービスは錦織のバックサイドに甘く入ってきた。

 このボールを鋭く打ち返した錦織は、迷うことなくネットに出る。果たして相手の力ない返球は、錦織の正面に。余裕を持って錦織は、バックのボレーでこれを叩いた。

 ところがボールは、無情にもネットの白帯に掛かり、錦織のコートにポトリと落ちる。両手をネットについて頭を垂れる後ろ姿が、錦織の胸中を物語っていただろう。

「あんな簡単なボールをミスったのが、大きなポイントになった」

 後に錦織は、その場面をこう述懐した。

「良いポイントがあるけれど、悪いポイントも自然と出てくるのが、ちょっと安定感がないところ。なのでそこを減らしていきたい」
 
 試合全体から得た手応えや課題を、錦織はそのように捉えている。果敢にトライしたネットプレーに関しても、「クレーでも、こうやって(ネットプレーを)混ぜていけるんだなっていうのがわかった」と、新たな収穫もあった様子だ。

 全仏オープン開幕は約10日後に迫るが、来週のヨーロピアン・オープン(ドイツ・ハンブルグ)にも出場予定。

「今年は、グランドスラムに照準を合わせるとか言ってられない状況。なるべく試合数をこなせればというのが第一目標です」と言い、今は何よりも実戦経験を切望している。

 2年前のジャパンオープンで、当時20歳のチチパスを圧倒した時、錦織は相手の若さに微かな羨望を滲ませながらも、「今は良い意味で落ち着いて、どっしり構えていられる。昔の方がもちろん思い切りの良さはありましたが、色々と経験して今があるんだなと感じた」と明言した。

 ケガとコロナ禍による1年のツアー離脱を経て、30歳になった錦織は今、再び「経験」を欲している。

 これまで踏破してきた道に、現在模索する攻撃的スタイルが重なった時、円熟味に豪胆さを加味した、新たな錦織圭のテニスが生まれるはずだ。

文=内田暁

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