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海外テニス

「クールな何かをやることよ」テニス界を超えたオピニオンリーダー、大坂なおみが目指すもの〈SMASH〉

内田暁

2021.03.23

昨年の全米では黒人差別を糾弾する7枚のマスクを着用し、耳目を集めた。テニスの枠を超えた社会的なメッセージを発するようになったのはこのころからだ。(C)Getty Images

昨年の全米では黒人差別を糾弾する7枚のマスクを着用し、耳目を集めた。テニスの枠を超えた社会的なメッセージを発するようになったのはこのころからだ。(C)Getty Images

 そのように新鮮でしなやかな“女子テニス界の顔”には、先の全豪オープンでも様々な質問が向けられ、彼女が発する言葉は時代を象徴するアイコンとして、大きく取り上げられもした。

 特に、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長に橋本聖子氏が就任したことについては、多くの意見を求められる。その際に彼女が言った「かつて、人々によって受け入れられたり聞き流されてきた発言も、今の若い人たちはしっかり糾弾していく。時代を先に進め、既成概念を打ち破っていくことは、特に女性にとって素晴らしいこと」という意見は、国内外でも広く報じられた。

 オフコートでも多くの責任ある立場に身を置くことを、彼女は「テニス以外のことを見聞することで、バランスが良くなったと思う。たとえ試合に負けても、やるべきこと、考えることがたくさんあるのは大きい」と言った。

 全豪優勝の翌日には、自らがアンバサダーを務めるルイ・ヴィトンのドレスに身を包んでフォトセッションに挑み、「オレンジと黄色、そして黒の組み合わせが私のお気に入りだから、このドレスを選んだの」と、はにかんだ笑みをこぼした。
 
 そのフォトセッション後に行なわれた囲み会見でも、「多くの人たちが、あなたのことをテニス選手以上の存在と見るようになったが、どう感じるか」との質問が飛んだ。疲れの色も見せず笑顔で取材に応じる彼女は、穏やかに応じる。

「自分のプラットフォームを使い、私が信じることを発信することで、少なくとも一人には私の思いが届くのは大きなこと。時々、私の個人的な物語が多くの人たちの共感を得られることに、驚かされる。コート上よりも、コートの外でやったことで人々に知られる方がうれしいと最近は感じるの」

 今や、「テニスプレーヤー」の枠組みを超え、大坂なおみという存在そのもので、彼女は世界に影響を及ぼす存在となっている。

 その彼女が、テニス以外で目指すこととは?
 その問いに23歳の若者の旗手は、チャーミングな笑みで答えた。

「クールであること。今まで誰もやったことがない、そんなクールな何かをやることよ」……と。

取材・文●内田暁

【PHOTO】黒人差別撤廃を訴えつつ優勝した2020全米オープン、大坂なおみスナップ集
 

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