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海外テニス

「このような生活が続くと精神的には…」東京五輪で採用の“バブル”が与えるテニス選手への影響<SMASH>

内田暁

2021.07.05

バブル・システムを導入して1年近くなるテニス界だが、現状は選手らの非日常の上に成り立っている。(C)Getty Images

バブル・システムを導入して1年近くなるテニス界だが、現状は選手らの非日常の上に成り立っている。(C)Getty Images

 このような事態もあったためか、選手への行動規制は厳しい。会場内を自由に動くことは許されず、敵情視察などのため観戦に行くにしても、エスコートが必要だ。

 選手への行動規制が厳しいのは、観客に対する制約が無いに等しいからでもある。観客には、2度のワクチン接種、もしくは抗原検査の陰性証明が求められるが、そこをクリアすれば、会場内ではマスクなしでの観戦が許されている。選手の立場に身を置けば「どうして観客と自分たちで、ここまで行動制限に差があるんだ」との疑念が頭に浮かぶのも無理からぬことだ。
 
 このような制約下で過ごす日々が、選手の心身に与える影響は当然大きい。

 全仏オープンで初のグランドスラム決勝進出を果たしたステファノス・チチパスは、ウインブルドンの初戦で敗退した後に、「長いバブル生活に、すっかり疲れ果てた」とこぼした。全て選手が同じ条件ではあるが……と前置きした上で、全仏準優勝者は続ける。

「このような生活が続くと、精神的にきつくなる。2週間バブルに入った後、また同じことを繰り返すのはつらい」

 一方で、選手が一堂に会するこの状況を、むしろ好機と捉えようとする選手もいる。

 全仏準決勝で、チチパスに敗れたアレクサンダー・ズベレフも、その一人。自分の部屋にドイツの選手たちを集め、サッカーの欧州選手権を観戦する予定だと笑顔で明かしていた。
 
 観客の入場規制等は緩和の道を進み、ウインブルドンでは大会中日の7月4日の時点で、「準々決勝以上の試合では、センターコート及びナンバー1コートに100%観客を入れる」と発表した。

 ただ選手へのバブルは、ワクチン接種を終えた選手には若干の緩和があるものの、基本的に1年近く変わっていない。

 ATPツアーのスタッフは、バブル緩和が困難な理由について、次のよう言っていた。

「テニスのツアーが難しいのは、開催国によって規制が異なり、しかも日々変化する点にある。だから選手サイドは、どこに行っても適応できる体制で転戦していくしかない」
 
 そのバブルの起点とも言える全米オープンでは、今年は通常通りに観客を入れて開催する予定だという。

「テニスに日常が戻ってきた」とは、今回のウインブルドンでもたびたびに耳にする言葉。ただその日常は、選手の非日常の上に成り立っている。

現地取材・文●内田暁

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