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海外テニス

1年以上もコートを離れる40歳のフェデラーが今も絶大な人気を誇る“プロフェッショナルな理由”<SMASH>

レネ・シュタウファー

2022.07.23

今年9月に開催されるレーバーカップでの復活が期待されているフェデラーだが、本人のなかに焦りのようなものはないようだ(写真は2019年のレーバーカップ出場時)。(C)Getty Images

今年9月に開催されるレーバーカップでの復活が期待されているフェデラーだが、本人のなかに焦りのようなものはないようだ(写真は2019年のレーバーカップ出場時)。(C)Getty Images

 フェデラーを「世間知らずの夢想家」だと思っている人は、浅はかな先入観を恥じるがいい。40歳のフェデラーは、ケガの状態と潜在能力の両面において厳しい現実主義者である。たしかに1500以上のシングルマッチをこなしてきた40歳の肉体は、25歳の若手とは比較にならないのを知っている。

 とはいえ、あの忌まわしい2021年でさえ、彼がまだ偉大な選手である事実を示していたではないか。半月板を損傷し、ベストからは程遠い状態でも、全仏オープンではベスト16、ウインブルドンでは準々決勝に進出した。想像を絶する精神的パワーがそうさせたに違いない。

 残念ながら、フェデラーは前述のインタビューの中で、引退しないことのスポーツ的、経済的な側面については沈黙するだけだった。彼は世界的に有名な大衆の寵児であるだけでなく、年収約1億ユーロ(約130億円)を稼ぐ有能なるビジネスマンでもある。

 観客の喝采を浴びるためだけではなく、選手としてもう1度レーバーカップに出場したいとの強い思いは変わらない。今年の9月23日から25日まで、ロンドンのО2アリーナは同大会がスケジューリングされ、舞台は整っている。よく知られるように、レーバーカップはフェデラーとトニー・ゴシックが生みの親である。レーバーカップの盛り上げはすなわちフェデラーの“養育義務”なのだ。
 
 3度目のカムバック劇の裏にどれだけのビジネス的関心があるのか、という疑問に答えられるのはフェデラー自身だけである。

 もちろん、スポンサーにとってもテニス界全体にとっても、「引退したフェデラー」よりも、「負傷したり回復したりしたフェデラー」のほうが価値のあることも彼は知っている。たとえ最悪の事態になっても、エキシビションマッチで無難に済ませることができる。ユニクロやOnシューズなど、多くのスポンサーやサプライヤーもそのほうが喜んでくれるだろう。

 通算103回の優勝を誇るフェデラーの多くのファンにとって、これは良いことに違いない。なぜならフェデラーがコートに戻ってくるのを待つ長い間、ずっと夢心地に浸れるのだから。

取材・文●レネ・シュタウファー
ITWA(国際テニスライターズ連盟)正会員。経験豊富なスイス人テニスジャーナリストで欧州を中心に第一線で活躍しており、フェデラーやヒンギスとは親交が厚い。2018年に発刊したフェデラーをテーマにした著書はスイスでベストセラーとなっている。
※本掲載記事はスマッシュ2022年2月号から抜粋・再編集

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