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海外テニス

ラッキーを夢への切符へ変えたナルディが幼少期からの“アイドル”に大金星!「勝てるなんて想像もできなかった」<SMASH>

内田暁

2024.03.13

「ジョコビッチ(右)のプレーを10年は見て育ってきた」と言うナルディ(左)は、その利点を生かし最後まで攻撃の手を緩めなかった。(C)Getty Images

「ジョコビッチ(右)のプレーを10年は見て育ってきた」と言うナルディ(左)は、その利点を生かし最後まで攻撃の手を緩めなかった。(C)Getty Images

 ただいざ試合が始まった時、彼は“アイドル”と打ち合えている自分に気付く。その背景にあったのは、ジョコビッチに憧れてきた履歴だ。

「僕は今、20歳。間違いなく、彼(ジョコビッチ)のプレーを10年は見て育ってきた。そして彼は恐らく、僕のプレーを見たことがない。そこが僕の、唯一のアドバンテージだった」

 実際にはジョコビッチは、後に「彼のプレーを見たことはある」と認めている。

「彼のことはあまり知らないが、プレーを見たことはあるし、ベースラインから……特にフォアハンドサイドから、高質のプレーをできることは知っていた。とても才能のある選手だ」

 そのようなジョコビッチによる“自分評”を知らないことは、ナルディにとって幸運だったかもしれない。自分の利点を信じ、強い風をジョコビッチが煩わしく感じていることも察しながら、ナルディは集中力を研ぎ澄ませていく。
 
 勝利へのサービスゲームでも、攻撃の手を緩めない。ジョコビッチも警戒したフォアハンドの豪快なスイングボレーでマッチポイントをつかむと、最後は、鋭いスライスサービスでエース。

 周囲の音も気にならないほど試合に入り込んでいたナルディは、この時ようやく、コーチの「みんなが君を応援しているぞ!」の声を聞いた。

 試合後の会見で、趣深い一幕があった。

 次の対戦相手のトミー・ポール(アメリカ)について問われた時、彼は怪訝そうな表情で、「なんでトミー・ポールのことを聞くの?」と問い返したのだ。司会者や記者たちから「次の相手だから」と言われると、「そうなの? 知らなかった、ドローを見ていなかったから」と恥ずかしそうに笑みをこぼす。

 彼が先を見ることなく、前の試合のみに集中していることの、何よりの証しだった。

現地取材・文●内田暁

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