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海外テニス

大坂はチームに打ち解け、日比野は「有明をやっと好きになれた」…日本に勝利を呼び込んだ選手たちの一体感【BJK杯総括】<SMASH>

内田暁

2024.04.14

エース対決でプチンツェワを下し、日本の勝利を決めた日比野菜緒(右)。涙を流しながら杉山愛監督(左)と抱き合った。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

エース対決でプチンツェワを下し、日本の勝利を決めた日比野菜緒(右)。涙を流しながら杉山愛監督(左)と抱き合った。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

 続いてコートに立った大坂は、カザフスタンのエース、ユリア・プチンツェワ相手に序盤から気迫のプレーを披露。とりわけサーブが冴えわたる。第1セットは6-2で大坂が奪取した。

 第2セットに入ると、杉山監督と大坂が言葉を交わす場面が増えていく。「彼女(プチンツェワ)は必ず、適応して調子を上げてくるから」

 監督のその言葉に、大坂の気持ちも引き締まる。実際に相手のサービスが切れ味を増し、一層攻撃性を増すにつれ、監督と選手は状況を言語化し認識を重ねながら、対策も講じていった。6-2、7-6(5)のスコアは、そんな2人の意思疎通の足跡だ。

 日本の連勝で折り返し、あと白星1つで勝利が決する2日目。8,000人に迫るサポーターで埋まったコロシアムは熱気がこもり、開始前から両国の応援団がエール合戦を繰り広げる。

 前日に続き第1試合のコートに足を踏み入れる日比野は、「次には大坂選手も青山、柴原選手も控えている」と思うことで、勇気が得られたと言った。ただ同時に、「団体戦は何が起こるかわからない。できれば3連勝で決めたい」との思いもあったと明かす。

 その思いは、プチンツェワとセットを分け合いなだれ込んだファイナルセットで、一層重みを増していった。先にブレークされる苦しい展開ながら、その都度、奪い返す。一球も無駄にしまいとボールに食らいつく日比野の気迫に呼応して、ポイントが決まるたびに、前列の観客たちは拳を振り上げ立ち上がった。その熱を全身に浴びながら、「この中で自分が勝利を決められたら、どんな気持ちになるんだろう」との思いが、日比野の脳裏をよぎる。
 
「ファイナルセットの(ゲームカウント)4-5あたりからお客さんのボルテージが上がったのを感じて。ここで、勝ちたいなって思いました」

 タイブレークの2-6、相手の4ポイント連続マッチポイントという絶体絶命の窮地で、日比野を突き動かしたのはただひたすらに、その渇望だったろう。

 最初のマッチポイントでは、相手がネット際で放つ強打を凌ぎに凌ぎ、ミスを誘った。気落ちした相手が立て続けにミスを重ねた後には、気迫のスイングボレー、さらには会心のエースを叩き込んだ。

 試合開始から、2時間10分――相手を振って作ったオープンコートに、柔らかく、丁寧にボレーを沈めた日比野は、線審のコールがかかるより先に、その場にしゃがみ込んだ。追って湧き上がる大歓声が、日本の勝利を熱狂的に祝福する。

「勝利した時の自分は、想像できなかった」という日比野は、自然とこみ上げる涙をぬぐいながら、コートサイドで声援を送り続けた、チームの面々と手を合わせていく。その祝福の列の最後……現役時代からの盟友でもあるBJK杯コーチの奈良くるみと、日比野は固く抱擁を交わした。

 その輪に杉山監督が、そして「ツアー優勝した時も彼女の涙を見たことがなかった」と言う長年のコーチ、竹内映二が降り重なる。それは、長く苦手意識を抱いていた有明のコートを、日比野が「やっと好きになれた」瞬間だった。

◆BJK杯1日目(4月12日)結果
〇日比野菜緒 61 60 アンナ・ダニリナ●
〇大坂なおみ 62 76(5)
◆BJK杯2日目(4月13日)結果
〇日比野菜緒 64 36 76(7) ユリア・プチンツェワ●
※大坂なおみ - アンナ・ダニリナ(勝敗決定により行なわれず)
●青山修子/柴原瑛菜 57 63 [9-11] アンナ・ダニリナ/ジベク・クランバエワ〇
[最終成績:日本 3-1 カザフスタン]

取材・文●内田暁

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