まだ、改善中のフォームが身体になじみきっていないシフィオンテクがナーバスになっていることは、屋根が閉まり無風に近いにもかかわらず、幾度もトスをやり直す姿に見て取れる。シフィオンテクのサービスゲームを、3度ブレークした大坂が第2セットを6-1で奪取。最後のポイントも、大坂の深いリターンを、焦って叩きにいったシフィオンテクのミスだった。
第3セットも、大坂の勢いは止まらない。ブレークポイントを凌ぎ第最初のゲームをキープすると、続くゲームでも炎のリターン連発でブレーク。そのリードを維持したまま、5-3で大坂のサービスゲーム。勝利は、目の前に迫った。
だがこのゲームで大坂は、今までになかった幾つかのミスを犯す。30-15の場面では、サービスで崩しオープンコート目がけ放ったショットを、ネットにかけた。
最初のブレークポイントは凌ぎ、会心のウイナーでマッチポイントに至るも、続くポイントでは、シフィオンテクのリターンに押されバックハンドをネットにかける。最後もバックハンドが長くなり、土壇場でブレークを許した。
直後の、シフィオンテクのサービスゲーム。大坂はデュースにまで持ち込むが、ブレークするには至らない。続く自身のサービスゲームは、ダブルフォールトでブレークを許した。
そうして、試合開始から2時間57分――。大坂のバックのクロスがラインを割り、死闘に終止符が打たれる。シフィオンテクとハグを交わし、淡々とバッグを担ぎ出口に向かう彼女は、湧き上がる大歓声に手を振り応えて、センターコートを後にした。
勝利を目前にしながら、相手に5ゲーム連取を許し逆転での敗戦。
その結末だけを聞くと、プレッシャーや高まる勝利への意識が、彼女の手元を狂わせたと思うかもしれない。だが、そうではなかった。
試合後の会見での彼女は、終盤の展開をさほど覚えていないほどに、「1ポイントごとに集中していた」と言った。
「私、マッチポイントがあったかすら、覚えていないんだけれど……」
そう言い大坂が、首を傾げる。記者席からの「あったよ」との声を聞くと、彼女は苦笑いを浮かべて、チャーミングに言った。
「あったの? ……もーう、最低!」
改善中のリターンは、第2セットでは62%の高いポイント獲得率を記録し、特に相手のセカンドサービスでは90%、11本中10本をポイントにつなげた。だが第3セットではその数字は、50%に下がる。
「もっと大きく前に踏み込めば、もっとうまくいったのではと思う局面が、何度かあった」と、後に大坂は振り返った。恐らくは、シフィオンテクが「あのゲームを境に、私の中のスイッチが切り替わった」と振り返る5-2でのゲーム、あるいは5-4でのリターンゲームも、そのような「局面」だったかもしれない。
ただ大坂の声色や表情には、悔いの色はない。
「だって全ては、上達のためのプロセスだから」。そう言い彼女は、柔らかく笑った。
大坂は最近、試合前後や試合中にも、思いついたことをノートに書き止めるようにし始めた。この試合の後、彼女はそのノートに、自身に向けてこんな言葉を書き残したという。
「あなたを、誇りに思う」……と。
現地取材・文●内田暁
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第3セットも、大坂の勢いは止まらない。ブレークポイントを凌ぎ第最初のゲームをキープすると、続くゲームでも炎のリターン連発でブレーク。そのリードを維持したまま、5-3で大坂のサービスゲーム。勝利は、目の前に迫った。
だがこのゲームで大坂は、今までになかった幾つかのミスを犯す。30-15の場面では、サービスで崩しオープンコート目がけ放ったショットを、ネットにかけた。
最初のブレークポイントは凌ぎ、会心のウイナーでマッチポイントに至るも、続くポイントでは、シフィオンテクのリターンに押されバックハンドをネットにかける。最後もバックハンドが長くなり、土壇場でブレークを許した。
直後の、シフィオンテクのサービスゲーム。大坂はデュースにまで持ち込むが、ブレークするには至らない。続く自身のサービスゲームは、ダブルフォールトでブレークを許した。
そうして、試合開始から2時間57分――。大坂のバックのクロスがラインを割り、死闘に終止符が打たれる。シフィオンテクとハグを交わし、淡々とバッグを担ぎ出口に向かう彼女は、湧き上がる大歓声に手を振り応えて、センターコートを後にした。
勝利を目前にしながら、相手に5ゲーム連取を許し逆転での敗戦。
その結末だけを聞くと、プレッシャーや高まる勝利への意識が、彼女の手元を狂わせたと思うかもしれない。だが、そうではなかった。
試合後の会見での彼女は、終盤の展開をさほど覚えていないほどに、「1ポイントごとに集中していた」と言った。
「私、マッチポイントがあったかすら、覚えていないんだけれど……」
そう言い大坂が、首を傾げる。記者席からの「あったよ」との声を聞くと、彼女は苦笑いを浮かべて、チャーミングに言った。
「あったの? ……もーう、最低!」
改善中のリターンは、第2セットでは62%の高いポイント獲得率を記録し、特に相手のセカンドサービスでは90%、11本中10本をポイントにつなげた。だが第3セットではその数字は、50%に下がる。
「もっと大きく前に踏み込めば、もっとうまくいったのではと思う局面が、何度かあった」と、後に大坂は振り返った。恐らくは、シフィオンテクが「あのゲームを境に、私の中のスイッチが切り替わった」と振り返る5-2でのゲーム、あるいは5-4でのリターンゲームも、そのような「局面」だったかもしれない。
ただ大坂の声色や表情には、悔いの色はない。
「だって全ては、上達のためのプロセスだから」。そう言い彼女は、柔らかく笑った。
大坂は最近、試合前後や試合中にも、思いついたことをノートに書き止めるようにし始めた。この試合の後、彼女はそのノートに、自身に向けてこんな言葉を書き残したという。
「あなたを、誇りに思う」……と。
現地取材・文●内田暁
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