世界最高のクレーコートで内島が、ネットを挟み相対したのは、世界2位のアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)。今年の全豪オープン優勝者であり、昨年9月には世界1位にも座した、トップ中のトップ選手だ。
キャリア2度目のグランドスラム本戦で、センターコートに立てる選手は、幸福だ。同時に、高揚感や緊張に押しつぶされ、思うように動けぬ選手も珍しくはない。
ただ内島は、そのようなタイプでもなかった。
「緊張はしてなかったです。朝、アップでセンターコートに入った時に『広いな』とは感じたんですけど……」
そして、彼女は言う。「テニスコートは、同じテニスコートなので」
コート・フィリップシャトリエだろうが、ITF大会の小さなコートだろうが、ネットの高さやベースラインの長さが変わるわけではない。ただこれまでと明確に異なったのは、世界2位が放つ、ボールの質だ。
第1セットは序盤こそ互いにキープが続くが、第6ゲームでサバレンカが、リターンウイナーでブレークする。
第2セットは序盤から圧力をかけ続けたサバレンカが、第4ゲームで、またもリターンウイナーでブレーク奪取。内島も激しい打ち合いの末にウイナーを叩き込んだり、ドロップショットを沈める場面もあった。だがパワー勝負になれば、当然ながらサバレンカに一日の長がある。内島のセンターコートでの戦いは、2-6、2-6のスコア、1時間2分で終幕した。
試合後の内島は、どこか晴れやかな表情だった。
「正直、すごく差があったと感じた試合でしたが、今できるベストは全て出せたかなって思いました。このコートで、トップの選手と試合できたのもすごく楽しかったので、これからにつなげていきたいなと思います」
笑みも浮かべ語る内島が、何より強烈に実感したのが、サバレンカの「バウンドした後にグッと押し込んでくるボールの重さ」。真のトップの強さを、重さを、そして、彼我の距離を自らの身体で測れた事実に、彼女は喜びを覚えていた。
交通の要衝の町で始まった連勝街道は、日本を経て欧州を横断し、そして、全仏オープンのセンターコートで、一旦の終着を迎えた。
その旅路を、内島は既に懐かしそうに振り返る。
「本当に充実した1カ月だったと思います。スペインから始まって、途中、サーフェスチェンジもあったり、日本で戦う普段味わえないプレッシャーだったり、色々な状況を乗り越えて、勝ち続けられた。今日は今日で、トップの選手と素晴らしいコートで戦えた。課題が見つかったところもあり、こんなに充実した1カ月はなかったのかなと思います。色んな経験ができて、本当に最高でした」
6週間前に143位だったランキングも、今や世界の83位。全仏オープン後はしばし身体を休め、数週間後には再び、欧州の芝のコートで新しい旅が始まる。
現地取材・文●内田暁
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ただ内島は、そのようなタイプでもなかった。
「緊張はしてなかったです。朝、アップでセンターコートに入った時に『広いな』とは感じたんですけど……」
そして、彼女は言う。「テニスコートは、同じテニスコートなので」
コート・フィリップシャトリエだろうが、ITF大会の小さなコートだろうが、ネットの高さやベースラインの長さが変わるわけではない。ただこれまでと明確に異なったのは、世界2位が放つ、ボールの質だ。
第1セットは序盤こそ互いにキープが続くが、第6ゲームでサバレンカが、リターンウイナーでブレークする。
第2セットは序盤から圧力をかけ続けたサバレンカが、第4ゲームで、またもリターンウイナーでブレーク奪取。内島も激しい打ち合いの末にウイナーを叩き込んだり、ドロップショットを沈める場面もあった。だがパワー勝負になれば、当然ながらサバレンカに一日の長がある。内島のセンターコートでの戦いは、2-6、2-6のスコア、1時間2分で終幕した。
試合後の内島は、どこか晴れやかな表情だった。
「正直、すごく差があったと感じた試合でしたが、今できるベストは全て出せたかなって思いました。このコートで、トップの選手と試合できたのもすごく楽しかったので、これからにつなげていきたいなと思います」
笑みも浮かべ語る内島が、何より強烈に実感したのが、サバレンカの「バウンドした後にグッと押し込んでくるボールの重さ」。真のトップの強さを、重さを、そして、彼我の距離を自らの身体で測れた事実に、彼女は喜びを覚えていた。
交通の要衝の町で始まった連勝街道は、日本を経て欧州を横断し、そして、全仏オープンのセンターコートで、一旦の終着を迎えた。
その旅路を、内島は既に懐かしそうに振り返る。
「本当に充実した1カ月だったと思います。スペインから始まって、途中、サーフェスチェンジもあったり、日本で戦う普段味わえないプレッシャーだったり、色々な状況を乗り越えて、勝ち続けられた。今日は今日で、トップの選手と素晴らしいコートで戦えた。課題が見つかったところもあり、こんなに充実した1カ月はなかったのかなと思います。色んな経験ができて、本当に最高でした」
6週間前に143位だったランキングも、今や世界の83位。全仏オープン後はしばし身体を休め、数週間後には再び、欧州の芝のコートで新しい旅が始まる。
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