コートの上で長時間、孤独に戦い続ける――肉体的にも精神的にも過酷なのは否めないが、それこそが本来のテニスというスポーツの大きな醍醐味だ。選手は自分自身だけを頼りに、試合の流れを読み取り、勝利を目指す。かつてはそれが当たり前だった。
だが今はもう違う。近年のルール改訂により、男女ともにツアー大会の予選および本戦、さらには最高峰の四大大会も含め、試合中にボックス席からコーチが選手に指示を送ることが許可(2022年に試験導入、25年1月1日より正式にルール化)され、テニス独特の“孤独感”は薄れつつある。そうした現状に、1970年代から80年代にかけて男子テニス界を席巻し、四大大会でも8度の優勝を経験した元世界王者のジミー・コナーズ氏(アメリカ/73歳)は強い不満を抱いている様子だ。
コナーズ氏は先日自身が運営するポッドキャスト『Advantage Connors』に出演。その中で近年のテニスツアーは「試合中のチームによるコーチングが行き過ぎている」と指摘し、自分の現役時代にはあり得なかった光景が繰り広げられていると冗談まじりに語った。
「コーチングが個人競技であるはずのテニスを団体競技にしてしまった。選手皆が試合中、すぐに助けを求めようとボックス席を見上げている印象を受ける。もし私が現役時代にそんなことをやったら、『自分の問題は自分で解決しろ』と言いながら、祖母も他の身近な人も私の目をえぐってきただろうね」
「私自身はオンコートコーチングには反対だ。試合中に助けをもらうのではなく、やるべきことは全て事前にやっておくべきだと思う。テニスは1対1の個人競技だからだ。デビスカップ(男子国別対抗戦)のような団体戦なら何をやってもいいが、1対1のトーナメントなら、試合前に全てを準備しておくべきだろう」
実は現役選手の間でも、コーチング導入に対する否定的な声は少なくない。以前デニス・シャポバロフ(カナダ/元10位/現26位)は自身のSNSで「1人で戦い抜くのがテニスの魅力かつ美しさでもあるのに、なぜそれを変えようとするのか」と投稿。またテイラー・フリッツ(アメリカ/現5位)やニック・キリオス(オーストラリア/元13位/現656位)も、コナーズ氏やシャポバロフと同様の意見を発信していた。
時代の変化と共にテニスの美学も変わっていく。それでもオフコートコーチングが選手にもたらす利便性と、テニスならではの孤独感を守りたいという思いの間で揺れる議論は、今もなお決着を見ていない。
文●中村光佑
【連続写真】コナーズ、ボルグ、エドバーグetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
【関連記事】元王者コナーズが若き才能アルカラスに忠告!「ジョコビッチ以外の選手の存在を無視してはいけない」<SMASH>
【関連記事】伊達公子、試合中のコーチングのメリットとデメリット。観戦をより面白いものにする<SMASH>
だが今はもう違う。近年のルール改訂により、男女ともにツアー大会の予選および本戦、さらには最高峰の四大大会も含め、試合中にボックス席からコーチが選手に指示を送ることが許可(2022年に試験導入、25年1月1日より正式にルール化)され、テニス独特の“孤独感”は薄れつつある。そうした現状に、1970年代から80年代にかけて男子テニス界を席巻し、四大大会でも8度の優勝を経験した元世界王者のジミー・コナーズ氏(アメリカ/73歳)は強い不満を抱いている様子だ。
コナーズ氏は先日自身が運営するポッドキャスト『Advantage Connors』に出演。その中で近年のテニスツアーは「試合中のチームによるコーチングが行き過ぎている」と指摘し、自分の現役時代にはあり得なかった光景が繰り広げられていると冗談まじりに語った。
「コーチングが個人競技であるはずのテニスを団体競技にしてしまった。選手皆が試合中、すぐに助けを求めようとボックス席を見上げている印象を受ける。もし私が現役時代にそんなことをやったら、『自分の問題は自分で解決しろ』と言いながら、祖母も他の身近な人も私の目をえぐってきただろうね」
「私自身はオンコートコーチングには反対だ。試合中に助けをもらうのではなく、やるべきことは全て事前にやっておくべきだと思う。テニスは1対1の個人競技だからだ。デビスカップ(男子国別対抗戦)のような団体戦なら何をやってもいいが、1対1のトーナメントなら、試合前に全てを準備しておくべきだろう」
実は現役選手の間でも、コーチング導入に対する否定的な声は少なくない。以前デニス・シャポバロフ(カナダ/元10位/現26位)は自身のSNSで「1人で戦い抜くのがテニスの魅力かつ美しさでもあるのに、なぜそれを変えようとするのか」と投稿。またテイラー・フリッツ(アメリカ/現5位)やニック・キリオス(オーストラリア/元13位/現656位)も、コナーズ氏やシャポバロフと同様の意見を発信していた。
時代の変化と共にテニスの美学も変わっていく。それでもオフコートコーチングが選手にもたらす利便性と、テニスならではの孤独感を守りたいという思いの間で揺れる議論は、今もなお決着を見ていない。
文●中村光佑
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