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国内テニス

「なぜ自分はテニスをやっているんだろう?」目標を見失った元世界70位の尾崎里紗が明かす心の葛藤とは【国内テニス】

内田暁

2020.05.26

緊急事態宣言が解除されて再びコートに立った尾崎の新たなる旅が始まろうとしている。写真:尾崎里紗

緊急事態宣言が解除されて再びコートに立った尾崎の新たなる旅が始まろうとしている。写真:尾崎里紗

 2017年春――彼女はマイアミの照りつける太陽の下で、あるいは強風が体温を奪う深夜のコートで、活き活きと走り回っていた。

 グランドスラムに次ぐ格付けの大会であるマイアミ・オープンで、予選を突破し、本戦でも二人のトップ50選手を破り4回戦へと勝ち進んだ躍進の時。最終的には、世界1位のアンジェリーク・ケルバーと戦う最高の舞台を踏み、ランキングも自己最高位の70へと駆け上がった。

 尾崎里紗、当時23歳。ジュニア時代から将来を嘱望されてきた大器が、新たなステージへの扉を開いたかに見えた。

 それから3年後の、今年3月。

 彼女は慶応大学のキャンパスで開催される、賞金総額$25,000のツアー下部大会に出場していた。世界ランキングは、315位。腰に痛みを抱えながらの戦いであり、試合も初戦で敗退する。

 そこで一旦、回復に専念するためにコートを離れた正にその頃、テニスツアーの当面の中断が発表された。それでも患部の痛みも取れ、そろそろ練習を再開しようとした矢先に、国内でも緊急事態宣言が発令され自宅待機を余儀なくされる。

 かくして、神戸の実家で久々に家族と穏やかな空間を共有し、緩やかに流れる時間に心を委ねる彼女は、慌ただしく過ぎていったこの2~3年を……さらにはそのもっと先まで時計の針を巻き戻し、自身の心の動きを丹念に辿っていった。
 
「2017年の終盤から、ちょっと精神的にも不安定というか、うまくいかないことが増えてきて。シーズンが終わって長めにオフを取り、気持ちを切れ替えられたかなと思って2018年シーズンに入ったんですが、そこでもうまくいかず」。

 噛み合っていた歯車が狂い始めた時、最初に歪を生じたのが“心・技・体”のいずれだったのか……、それを見極めるのは難しいが、彼女の場合は一つには“技”だったという。

「もうちょっと積極的に攻めるスタイルに変えようと思い、それに取り組んでいたのですが全然ハマらず、そこで焦りも出て。17年に自分のテニスが見えはじめていたのに、それがまた見えなくなり、見えなくなってきた時に、前年のマイアミで獲得した(ランキング)ポイントが消えて一気にランキングが落ちてしまったんです」。
 
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