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海外テニス

「それぞれが自分に有利な動きをする」ダニエル太郎らがツアー再開に向けて感じる「テニス界の弱いところ」

内田暁

2020.07.24

「別々に運営組織があれば、それぞれが自分に有利な動きをする」とダニエル太郎はテニス界の問題点を口にする。(C)Getty Images

「別々に運営組織があれば、それぞれが自分に有利な動きをする」とダニエル太郎はテニス界の問題点を口にする。(C)Getty Images

「今テニス界は、弱いところを見させられてる状態だと思います」

 取り立てて嘆くでも糾弾する風でもなく、ダニエル太郎はあるがままを述べるように、淡々とそう言った。

 ツアーを本格的に転戦するようになり、はや10年。英語とスペイン語を操り、国内外の選手や関係者に広い人脈を持つ彼は、コロナ禍のテニス界をも広い視野で俯瞰しているようだ。

 そのダニエルの目に映る「テニス界の弱いところ」とは、ツアー全体を統括する組織の不在である。

 現在、テニス大会の主流となる男女のプロツアーを統括するのは、男子はATP(男子プロテニス協会)、女子はWTA(女子テニス協会)。

 一方、オリンピックや国別対抗戦を含む国際大会を運営するのが、ITF(国際テニス連盟)。それらに加えグランドスラム4大会では、全米オープンならUSTA(アメリカテニス協会)という風に、それぞれの開催国の組織が決定権を握る。

 つまりは現状、7つの巨大な運営組織が綱引きをしつつ、各々の基準に則り物事を決めていく状況だ。これは、世界中で開催される大会を選手が転戦し、世界ランキングという完全一元化された強さの指標を追い求めるフォーマットとは、大きな齟齬をきたすシステムである。

 それらの矛盾が、ここに来て一気に表面化した。全仏オープンが、他の運営組織に相談することなく9月延期(本来は5月24日開幕)を独断専行的に決めたのは、その最たる例だろう。
 
 また、約1カ月前にATPとWTAが8月のツアー再開を公言したが、そのスケジュールもここに来て混沌としている。ツアー再開の狼煙となるはずの、男女共催大会のシティ・オープン(米国ワシントンDC開催)は7月に入って中止に。ただその発表時期には、ATPとWTAで10日ほどのタイムラグがあり、しかもWTAは「代わり」として欧州の大会を追加した。

 またATPは、現在選手が保持しているランキングポイントの有効期間を、通常の52週から22カ月まで大幅に延長したが、WTAは沈黙したまま。このあたりの足並みの不揃いは、まさにダニエルが指摘する「弱いところ」だ。

 ただダニエルは、事態を憂慮しながらも「こうなるのは当然」と冷静に見る。

「別々に運営組織があれば、それぞれが自分に有利な動きをするのは当たり前。それが出来るシステムに問題があるんです。例えば全米オープンは、ヨーロッパから選手が入れなくても絶対にやると思います。USTAは、それくらいの力を持っているから。でも、それくらいの力を持っているのがおかしい。勝手にやれるのが間違っているんです。

 選手やATPは話し合える場所がないし、選手だけでなくATPもグランドスラムには強く言えない。特に選手は、(力関係の)ピラミッドの一番下にいると思います」
 

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