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海外テニス

「心理状態は見る角度ひとつで変わる」。苦手な相手との試合前に、コーチが大坂なおみにかけた言葉【全豪オープン/現地発レポート】〈SMASH〉

内田暁

2021.02.13

スコア以上に内容の濃い試合を制し、成長した姿を見せた大坂なおみ。(C)Getty Images

スコア以上に内容の濃い試合を制し、成長した姿を見せた大坂なおみ。(C)Getty Images

 出だしの3ゲームで21分を要した事実が、スコアには表れない、この試合の趣きを物語っているだろう。

 オンス・ジャブールが、ツアー屈指の“曲者”であることは、今や女子テニス界の共通認識。ドロップショットにフラットの強打、飛び上がり打ち込むバックハンドなど、溢れんばかりのセンスをコート狭しと描く、手持ちのカードの豊かな選手だ。

 そのようなトリッキーなテクニシャンは、大坂が苦手としたタイプだとも言える。2019年に2度破れたユリア・プチンツェワや、常に接戦となるシェイ・スーウェイらもしかり。両者の過去唯一の対戦である5年前のエキジビション大会では、「今まで見たことのないプレー」に翻弄された大坂が破れている。

 公式戦では初となる今回の対戦でも、ジャブールは試合開始早々、持ち味を発揮した。大坂のセカンドサービスを跳ね際でとらえ、リターンからプレッシャーをかける。足を止めたハードヒットの打ち合いから一転、ゆるいスライスをネット際に落とし、大坂のミスを誘いもした。

 第1ゲームは5度、続くサービスゲームでも6度のデュースを繰り返し、この間にジャブールが手にしたブレークの機は5回。それでも、その全てをサービスエースなどでしのいだ大坂は、徐々にジャブールの揺さぶりにも適応しはじめた。
 
 相手のドロップショットを、スライディングしながら打ち返しウイナーにする。スライスには、自身も昨年から取り組んでいる片手スライスで対抗した。

 安定感を高めた大坂を崩すべく、さらにショットバリエーションを増やすジャベールだが、リスクに針が振れた分、ミスも当然増えていく。第1セットは終盤のブレーク合戦を抜け出した大坂が、6-3でつかみとった。

 第2セットでは大坂は、やるべきことが明瞭化されたかのように、勝負所でプレーの質を引き上げる。相手のセカンドサービスに照準を絞り、奪い取った2度のブレーク。最後は、サービスウイナーで濃密なストレート勝利に終止符を打つと、ネット際で友人にして好敵手と固いハグを交わした。

 緩急の揺さぶりに苛立ちをつのらせ、自ら崩壊したのも過去の話。今の大坂は、「むしろ彼女のような選手と対戦できるのを楽しみにしていた」と穏やかに言う。
 
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