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海外テニス

「これは新しい旅」感覚も自信も取り戻した錦織圭が、次なる扉をこじ開けるための鍵とは?<SMASH>

内田暁

2021.03.27

ドバイではシードのゴファンを破るなどしてベスト8入りした錦織圭。「トップ10とも十分戦える」との手ごたえを得た。(C)Getty Images

ドバイではシードのゴファンを破るなどしてベスト8入りした錦織圭。「トップ10とも十分戦える」との手ごたえを得た。(C)Getty Images

「試合勘は、やっているうちに戻ってくると思う。いつクリックするのか、それ待ちではあります」

 彼が確かな口調でそう言ったのは、約1カ月前に行なわれた、全豪オープンの初戦後だった。試合には、敗れている。それも、5-7、6-7(4)、2-6というストレートでの敗戦だ。

 それでも、試合後の錦織の表情と言葉の端々からは、自身を信じるがゆえの、前向きな熱がにじみ出ていた。結果やスコアだけでは決して見えない、本人の中に点在する、完全復活への数々のパーツ。それらが音を立てて噛み合う日の訪れを、錦織はメルボルンで予感していた。

 その噛み合う音を聞く時は、本人の予想よりも早かっただろうか。全豪の敗戦から3週間後の、ロッテルダム。錦織は初戦で、世界19位のフェリックス・オジェ-アリアシムを7-6(4)、6-1で破り、今季初勝利をつかんだ。

 試合前に、復調の予兆はなかったという。サーフェスやボールの打感も独特な環境にやや戸惑い、練習でも良いフィーリングは得られなかった。
 
 それが試合が始まった途端、「突然ボールが入る気がしたし、落ち着いてプレーできた」と言う。さらには、「よりパワーを生むため」に昨年末から改善に努めてきたサービスのフォームも、かなり定着してきたようだ。

 この試合の錦織は、ファーストサービスを74%の高確率で入れ、しかも85%をポイントにつなげている。「サービスでフリーポイントを取れたおかげで、ストロークのリズムも良くなる」という好循環に心地よく身をゆだね、錦織はボールを打つたびに試合勘と自信を取り戻していた。

 ひとたび思い出したボールを打ち抜く爽快感と、相手の動きを読み種々のボールを打ち分けるリズム感を、錦織は次の試合でも継続する。2回戦では、ツアー随一のフットワークを誇るアレックス・デミノーを、2時間を超えるフルセットの激闘の末に打ち倒した。長いラリーを幾度も繰り返し、心身のスタミナを削り合うような総力戦の末に、最後は頬が紅潮し息が切れるほどの「全力攻撃」でもぎ取った、熱い熱い価値ある白星。

「ボールの感覚がないという感じはなくなったので、その言い訳は使えない」

 復調宣言とも取れる言葉を残したのも、このデミノー戦後のことだ。
 
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